研究領域 | ネオ・セルフの生成・機能・構造 |
研究課題/領域番号 |
17H05794
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 政克 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00311605)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 細胞老化 / ミトコンドリア / mTOR / Menin |
研究実績の概要 |
本年度は腫瘍抑制因子menin欠損をした活性化CD8 T細胞,menin欠損骨髄由来樹状細胞(BMDC)を老化細胞モデルとして老化に伴うネオ・セルフ生成に関する解析を行なった。その結果、抗原刺激後7日目においてmenin欠損活性化CD8 T細胞内のミトコンドリアでは、正常活性化CD8 T細胞ミトコンドリアに比べ,ROSの上昇、膜電位の低下が認められた。menin欠損活性化CD8 T細胞内では,ユビキチン化タンパク質の蓄積していたことから,タンパク質分解異常が起こっていると考えられた。さらに、透過型電子顕微鏡を用いた解析から、menin欠損活性化CD8 T細胞では形態的にも異常なミトコンドリアが多数存在し、マイトファジー不全が誘導されている可能性が示された。これらの結果は,meninは活性化CD8 T細胞のミトコンドリア機能の維持に必要な分子であることを示している。また、menin欠損CD8 T細胞で見られたこれらのミトコンドリア異常は、抗原刺激時にラパマイシン処理することにより抑制されたことから,mTORC1の活性化が関与していることが分かった。さらに、menin欠損CD8 T細胞において、抗原刺激時のmTORシグナル活性が正常CD8 T細胞に比べ高いことも見いだしている。現在、menin欠損CD8 T細胞におけるmTORシグナルとミトコンドリア異常との関係を解析中である。一方、menin欠損BMDCを用いた解析では、menin欠損BMDCにおいてMHCクラスII、CD40、CD80の発現が野生型BMDCに比べ上昇していることが分かった。現在、TLR7またはTLR9リガンド刺激による炎症性因子の発現変化について解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞ミトコンドリア機能におけるmeninの役割解析は、当初の計画以上に進んでいる。一方,樹状細胞をはじめとした抗原提示細胞での解析の進捗はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に達成できなかったMenin欠損骨髄由来樹状細胞(BMDC)における、効率的な細胞老化誘導方法をまず確立する。申請者らは、マイトファジーの亢進と障害を介してオートファゴソーム内に放出されるmtDNAを認識して活性化したTLR9シグナル伝達経路が、細胞老化に伴うネオ・セルフ生成に関与していると予想している。実際に、これらTLRを介したシグナルにより炎症性サイトカインやI型インターフェロン産生が誘導されるだけでなく、MHCクラスIIやCD80/CD86などの共刺激分子の発現も増強することが報告されている。そこで、今年度は作製した老化細胞モデルであるmenin欠損BMDCにおけるMHCクラスII、CD80/CD86分子の発現、I型インターフェロンの産生におけるmtDNAの役割について検討する。また、menin欠損老化T細胞と正常T細胞から調製したmtDNAに対するBMDCの応答について、IL-1β、IL-6、TNFαなどの炎症性サイトカイン産生、MHCクラスII、CD80/CD86分子の発現などを指標に解析を行なう。
|