老化・疲弊細胞で発現が著しく低下する腫瘍抑制因子meninを欠損した活性化CD8 T細胞を老化細胞モデルとして用い、老化に伴うミトコンドリア異常とネオ・セルフ生成に関する解析を行なった。 抗原刺激後7日目においてmenin欠損活性化CD8 T細胞内のミトコンドリアでは、正常活性化CD8 T細胞ミトコンドリアに比べ,ROSの上昇、膜電位の低下が認められた。また、menin欠損活性化CD8 T細胞内では,ユビキチン化タンパク質の蓄積していたことから,タンパク質分解異常が起こっていると考えられた。さらに、透過型電子顕微鏡を用いた解析から、menin欠損活性化CD8 T細胞では形態的にも異常なミトコンドリアが多数存在し、マイトファジー不全が誘導されている可能性が示された。これらの結果は,meninは活性化CD8 T細胞のミトコンドリア機能の維持に必要な分子であることを示している。また、menin欠損CD8 T細胞で見られたこれらのミトコンドリア異常は、抗原刺激時にラパマイシン処理することにより抑制されたことから,mTORC1の活性化が関与していることが分かった。さらに、menin欠損CD8 T細胞において、抗原刺激時のmTORシグナル活性が正常CD8 T細胞に比べ高いことも明らかとなった。同様の結果は、in vitroで人為的に老化・疲弊様形質を誘導してmeninの発現が低下した野生型CD8 T細胞においても認められた。現在は、menin欠損CD8 T細胞におけるmTORシグナルとミトコンドリア異常、リソソーム活性化異常との関係を解析中である。 また、T細胞特異的menin欠損マウスにおいて、リステリア感染後に自己タンパク質に反応する自己抗体の上昇が認められることも見出しており、今後はT細胞におけるmeninの発現低下と自己免疫応答の関連についても解析したいと考えている。
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