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2017 年度 実績報告書

造血細胞移植に関わる新たなアロ免疫認識機構の解明

公募研究

研究領域ネオ・セルフの生成・機能・構造
研究課題/領域番号 17H05797
研究機関琉球大学

研究代表者

森島 聡子  琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40463195)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード同種造血幹細胞移植 / HLA / アロ免疫
研究実績の概要

本研究は、ヒトのアロ免疫認識機構により生じる移植免疫反応へのHLA遺伝子領域の関与を詳細に解析し、新たなアロ免疫機構を明らかにすることを目的としている。
本研究領域A02ネオ・セルフ研究代表者である椎名らが開発したlong-range系 PCR法(Tissue Antigens 2012;80:305)で解析した日本人の主要なHLA-DPB1アリルの遺伝子全領域の情報を用いて、HLA-DPB1遺伝子のグループ分けを行った。その情報に基づいて、日本骨髄バンクを介した非血縁者間造血幹細胞移植 (UR-HSCT) 施行症例の臨床及びHLAデータを用いて、HLA-DPB1遺伝子グループの移植片対宿主病(GVHD)への影響を検討した。
その結果、HLA-DPB1アリルはexon 3から3'非翻訳領域 (3'UTR) の領域で二つのグループに分かれることを明らかにした(HLA-DP2と-DP5グループ)。さらに、患者とドナー1589ペアのHLA領域のmulti-SNP解析で、各HLA-DPグループはintron 2の途中から3’UTRまでグループ固有の配列を有することを示した。UR-HSCTが施行された1286症例で急性GVHDへの影響を検討したところ、患者の不適合となるHLA-DPB1がHLA-DP5グループの場合、HLA-DP2グループに比べて有意に急性GVHDのリスクが高くなることを示した。一方、exon2で作成した系統樹は必ずしもこのグループには一致せず、HLA-DP分子のペプチド結合部位とそれ以外の部位の進化過程が異なることが判明し、HLA-DPB1のexon 3から3’UTRの領域は従来GVHD発症に重要と考えられてきたexon 2がコードするペプチド結合部位の影響とは異なる機序でGVHDの発症に関連している可能性を示した。本研究成果は、学会発表及び論文発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、非血縁者間造血幹細胞移植 (UR-HSCT)において患者とドナーのHLA-DPB1不適合によって生じる移植免疫反応が、HLA-DPB1遺伝子の進化学的構造の違いによって生じることを初めて示した。
日本骨髄バンクを介したUR-HSCTでは、HLA-A, -B, -C, -DRB1のアリル型が適合したドナーがHLA完全一致のドナーとして選択され、HLA-DPB1のタイピングは通常施行されていない。そのため、患者とドナーのHLA-DPB1不適合が高率に生じる。近年、UR-HSCTにおける患者とドナーのHLA-DPB1不適合が移植転帰に及ぼす意義について、欧米から報告された二つの異なるモデルが注目されていた。一つはHLA-DPB1のペプチド結合部位を反映したHLA-DPB1 T-cell epitope (TCE)不適合モデル(Lancet Oncol. 2012;13:366)で、もう一つはHLA-DPB1遺伝子の3’UTRに位置する一塩基多型(SNP)と関連したHLA-DPの発現モデル(N Engl J Med. 2015;373:599)である。この二つのモデルの関連性については、これまで明らかにされていなかった。我々は、HLA-DPの発現モデルで示されていたHLA-DPB1遺伝子の3’UTRに位置するSNPは、HLA-DPB1遺伝子の高度に保存されたexon 3から3’UTR領域のtag SNPであることを示した。
本研究は、前述した急性GVHDや移植予後と関係するHLA-DPB1不適合のトピックスとなっている二つのメカニズムが、各々進化学的に異なる領域を反映していることを初めて示した。

今後の研究の推進方策

HLA-DPB1遺伝子以外のHLA class II遺伝子及びHLA class I遺伝子について、全遺伝子領域のデータを用いた進化学的な解析を行う。それに基づいた進化学的な遺伝子構造が移植免疫反応にどう影響するか、非血縁者間骨髄移植例のHLAデータと臨床データを用いた解析を進める。特に、急性GVHD、慢性GVHD、白血病再発などの移植転帰との関連について解析する。急性GVHDで標的となる臓器は主に皮膚、肝臓、腸管である。腸管のGVHDは他の臓器のGVHDと比較して重症化しやすい傾向があること、慢性GVHDにおいては、肺病変など急性GVHDとは異なる臓器も標的となることから、患者とドナーで不適合となるHLAと標的となる臓器との関連性も検討する。
解析症例は、患者とドナーのHLAアリルがリタイピングされ、HLA-A, B, C, DRB1, DQB1, DPB1の第1区域と第2区域が同定されており、GVHDとGVL効果を明確に解析できるような条件を備えたペアを選択する(約5000ペア)。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Evolutionary basis of HLA-DPB1 alleles affects acute GVHD in unrelated donor stem cell transplantation.2018

    • 著者名/発表者名
      Morishima S, Shiina T, Suzuki S, Ogawa S, Sato-Otsubo A, Kashiwase K, Azuma F, Yabe T, Satake M, Kato S, Kodera Y, Sasazuki T, Morishima Y.
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 131 ページ: 808-817

    • DOI

      10.1182/blood-2017-08-801449.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Risk of HLA Homozygous Cord Blood Transplantation: Implications for Induced Pluripotent Stem Cell Banking and Transplantation.2018

    • 著者名/発表者名
      Morishima Y, Azuma F, Kashiwase K, Matsumoto K, Orihara T, Yabe H, Kato S, Kato K, Kai S, Mori T, Nakajima K, Morishima S, Satake M, Takanashi M, Yabe T.
    • 雑誌名

      Stem Cells Transl Med

      巻: 7 ページ: 173-179

    • DOI

      10.1002/sctm.17-0169.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] HLA-DPB1 mismatch induces a graft-versus-leukemia effect without severe acute GVHD after single-unit umbilical cord blood transplantation.2018

    • 著者名/発表者名
      Yabe T, Azuma F, Kashiwase K, Matsumoto K, Orihara T, Yabe H, Kato S, Kato K, Kai S, Mori T, Morishima S, Satake M, Takanashi M, Nakajima K, Morishima Y.
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 32 ページ: 168-175

    • DOI

      10.1038/leu.2017.202.

    • 査読あり
  • [学会発表] 非血縁者間骨髄移植における日本人の高頻度HLAハプロタイプ (HP-P2)の急性GVHD抑制効果2018

    • 著者名/発表者名
      森島聡子、東史啓、屋部登志雄、柏瀬貢一、椎名隆、加藤俊一、小寺良尚、笹月健彦、森島泰雄
    • 学会等名
      第40回日本造血細胞移植学会総会
  • [学会発表] Impact of mismatched HLA on graft-versus-host disease in unrelated stem cell transplantation2017

    • 著者名/発表者名
      森島聡子
    • 学会等名
      第79回日本血液学会学術集会
  • [学会発表] JMDP HLA-DP study update -Evolutionary basis of HLA-DPB1 alleles affects acute GVHD in unrelated donor stem cell transplantation-2017

    • 著者名/発表者名
      Satoko Morishima
    • 学会等名
      The 17th International & Immunogenetics Workshop
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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