公募研究
紫外線は従来、免疫寛容を誘導する事が知られている。例えば、乾癬には日光浴が効果的であるし、北欧で多発性硬化症などの自己免疫疾患のリスクが高いことは紫外線の暴露量の低さが要因の一つと報告されている。しかし、紫外線が免疫寛容を誘導するメカニズムは不明な点が多い。研究代表者は、紫外線照射にて制御性T細胞が皮膚のCD4+T細胞の約60%にも増えることを見出した。制御性T細胞は、通常は末梢CD4+T細胞の5-10%を占め、自己免疫疾患の発症を抑制している。制御性T細胞は、紫外線により皮膚からレリースされた自己抗原「ネオ・セルフ」を認識して増え、自己免疫疾患の発症を抑制していると考える。これを本研究にて証明し、将来、紫外線で増える制御性T細胞を利用した新しい自己免疫疾患の治療法に貢献することを目指す。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者らは、紫外線照射をした皮膚において、様々な免疫反応を抑制する制御性T細胞が通常の3倍にも増えていることを見出した。本年度は、紫外線照射にて皮膚で増える制御性T細胞の増殖メカニズムを検討し、紫外線照射した皮膚においてネオ・セルフを提示する樹状細胞のサブセットを特定することができた (Yamazaki S et al. 2018)。研究成果をネオセルフ若手の会、International workshop of Langerhans cells 2017では口演に選択され発表した。一般向けにも免疫ふしぎ未来、名市大公開講座オープンカレッジで講演した。
将来、紫外線で増える制御性T細胞を利用した新しい自己免疫疾患の治療法への貢献を目指すため、30年度は下記を行う。1) 紫外線で誘導されたネオ・セルフはどのように樹状細胞により提示されているか?初年度に、紫外線照射後に皮膚で増える制御性T細胞には、特定の皮膚の樹状細胞サブセットが重要である事を見出し、報告することができた(Yamazaki et al, J.Immunol 2018)。この樹状細胞サブセットと他の樹状細胞サブセットについて、制御性T細胞の増殖や免疫寛容に重要な分子群の遺伝子発現の解析をしたところ、興味深い結果を得た。これらの分子による機能の解明のため、ノックアウトマウスや中和抗体による実験などを引き続き30年度に行う。2) 紫外線で増えた制御性T細胞はネオ・セルフを認識し、自己免疫反応を抑制しているか?紫外線により皮膚で増殖する制御性T細胞が紫外線で皮膚よりレリースされたネオ・セルフを認識し、自己免疫反応を抑制しているかを検討するため、初年度に引き続き、抑制機能の検討をする。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Thrombosis Medicine
巻: 印刷中 ページ: ー
The Journal of Immunology
巻: 200 ページ: 119~129
10.4049/jimmunol.1701056
J Dermatol Sci
巻: 86 ページ: 46~53
10.1016/j.jdermsci.2017.01.001
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/immunol.dir/index.html