公募研究
免疫プロテアソームはいくつかのサブユニットから構成されるタンパク複合体であり、不要または不良のタンパク質の分解除去と共に、抗原処理すなわちネオセルフの生成にも重要な役割を果たすと考えられる。免疫プロテアソームのサブユニットbeta5iのアミノ酸置換ホモ変異により自己炎症性疾患(中條-西村症候群)が生じることが明らかになっている。中條-西村症候群様の症状を呈する患者において、免疫プロテアソームの別のサブユニットbeta1iのアミノ酸置換をきたすde novoの新規変異(beta1iX)がヘテロで認められた。このアミノ酸はほ乳類のみならず、は虫類や魚類でも保存されており、構造シミュレーション解析により活性中心の構造維持に必須であることも推察された。一方、beta5iを含む、他の免疫プロテアソームサブユニットおよびインフラマソーム関連分子の遺伝子には疾患と関連する変異は見られなかった。そこでこのbeta1iで変異が認められたアミノ酸の重要性およびその変異の病理的意義を明らかにするために、CRISPR法により、マウスにbeta1iX変異を導入した。beta1i Xホモ変異マウスは2か月令ぐらいから死に始め、6か月令以内に死亡した。beta1i Xヘテロ変異マウスはほぼ外見は正常であったが、胸腺、脾臓のT細胞、特にCD8 T細胞の著明な減少が認められた。一方、骨髄においては、単球系(CD11b陽性)細胞の増加が認められた。今後、beta1iX変異マウスと共に、beta1i欠損マウス、中條-西村症候群の変異を持つマウスの解析を共に進める。
2: おおむね順調に進展している
beta1iX変異マウスの作成、解析に加えて、beta1i欠損マウスの作成、中條-西村症候群の変異を持つマウスの導入も順調に進んでいる。これまでに得られた遺伝子改変マウスはユニークな実験系であり、いくつかの共同研究がスタートしつつあり、当研究室での知見との相乗効果が期待される状況にある。
beta1iX変異マウスに様々な病態モデルを適用し、その病理的意義の解明を進める。また、beta1iX変異マウスで多彩な表現型が認められたことから、細胞種特異的にbeta1iX変異を導入する必要が生じている。そこで、そのための遺伝子改変マウスの作成を進め、細胞種特異的な変異の影響を明らかにする。得られた知見の解析を進め、学会発表、論文発表、メディア発表などにより成果を広く発信する。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
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http://www.wakayama-med.ac.jp/med/seitai/index.php