公募研究
本研究課題においては、ネオ・セルフ抗原の中でも特に脂質抗原に着目し、アレルギー疾患に関わる抗原あるいは内在性の脂質抗原に関わる因子探索を目的として活性分子の合成を行った。このような脂質化合物は自然界から純粋な形で得ることが困難なものが多く、化学合成による純度の高い分子の取得が必須となっている一方、合成例が知られていない分子も多い。また、合成的に得られた脂質分子を用い、その免疫調節作用の評価と機能の解析を行った。すなわち、まず、内在性の脂質抗原のほか、環境中あるいは寄生性の生物として存在する、植物、線虫、原虫、等の真核生物および細菌を含む広い生物種において、共通の骨格構造を持つ複合脂質の効率的合成法の確立を行った。確立した合成手法を用い、ネオ・セルフあるいはセルフ抗原となりうる脂質分子群の合成を進め、これまでに自然界に存在は見出されていたものの化学合成例のない化合物を含めたネオ・セルフ脂質抗原の合成に成功した。また、Th1/Th2バイアスの分子基盤解明のため、選択的活性化が可能な複合脂質構造についても合成を進めた。合成的に得られたネオ・セルフ脂質抗原について、抗原提示の際のCD1dとの分子間相互作用、および、CD1d-脂質複合体による活性化、サイトカイン誘導活性、およびそれらの構造活性相関の評価を進め、脂質部位の構造に依存した選択的サイトカイン誘導活性に関する知見を得た。特に、Th1/Th2バイアスの選択性において、ネオ・セルフ脂質抗原構造あるいはCD1dとの相互作用と選択性の関連を示した。また、タンパク質抗原と脂質抗原との相乗的な免疫活性化調節について解析を行った。 以上の結果により、環境中あるいは生体内の複合脂質抗原による免疫調節の一端を初めて解明し、これまで合成例が少なく純粋な脂質物質を用いた研究例の少ない、“ネオ・セルフ“複合脂質抗原の機能解明へ一つの道筋を拓いた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.chem.keio.ac.jp/~fujimoto-lab/