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2017 年度 実績報告書

遺伝子サイレンシング機構の破綻によるネオセルフ生成と、免疫活性化の検証

公募研究

研究領域ネオ・セルフの生成・機能・構造
研究課題/領域番号 17H05801
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

竹馬 俊介  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50437208)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード免疫寛容 / 新規抗原 / 抗原提示 / T細胞 / 免疫制御
研究実績の概要

TRIM28(Tripartite motif 28)は、ヘテロクロマチンタンパク、ヒストン脱メチル化酵素およびヒストンメチル化酵素と会合し、抑制性ヒストン修飾によりグローバルに転写抑制を起こす役割を持つ分子である。研究代表者は、TRIM28分子をマウスのTリンパ球で特異的に欠失させると、自己反応性のIL-17産生性ヘルパーT細胞(Th17)が分化、活性化し、自己免疫疾患を発症して早期に死亡することを報告している (Chikuma et al. Nat.Immunol. 2013)
当研究の目的は、TRIM28分子の、免疫系における機能をさらに詳細に解析することである。本年度はTRIM28を、抗原提示細胞で欠損するマウスを作成し、これらマウスの抗原提示細胞による抗原提示能が上昇し、Tリンパ球をよく活性化することを見出した。特に、自家リンパ球混合反応(auto MLR)において、TRIM28欠損抗原提示細胞が自家のT細胞を強く活性化する現象を見出し、これは、遺伝子サイレンシング機構がうまく働かないため、「新規自己抗原(ネオセルフ)」として、正常細胞では提示されない新規抗原が生成されていることを示唆するデータである。新規抗原の実体を理解するため本年度行ったトランスクリプトーム解析により、TRIM28欠損細胞では、多くの免疫学的隔絶抗原、および、種々の、本来は発現抑制を受けるべき転写産物が有意に上昇していることを明らかにした。現在、これら転写産物が老化に伴いタンパクとして発現し、T細胞に異物として認識され、自己免疫疾患の原因となる可能性を検討中である。
これとは別に、免疫抑制受容体PD-1の翻訳後修飾や、制御性T細胞の機能抑制をターゲットにしたがん免疫増強法などについて、論文を6報、総説を3報発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、細胞レベルでの遺伝子発現調節異常が免疫活性化に及ぼす影響を模索するため、新規動物モデルを作出し、当該マウスから興味深い表現型が得られたために、初期の目標は十分に達成できたと考えている。研究代表者の専門である、免疫制御に関しても多くの研究発表を行うことが出来た。また、ネオセルフ領域に参加したことで、班員とのあらたな共同研究の芽も生まれ、発展性のある予備的知見を得ている。

今後の研究の推進方策

トランスクリプトーム解析の結果同定した抗原が、実際にタンパクとして発現し、T細胞を刺激するのかを検証する。また、TRIM28欠損が自己免疫疾患の原因となる可能性を検討中である。本研究では比較的自己免疫疾患に抵抗性であるC57BL/6系統で行うため、明らかな表現型が得られない場合、自己免疫疾患に感受性のPD-1KOに、TRIM28欠損マウスを交配することも考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)

  • [雑誌論文] Inhibition of Nr4a receptors enhances anti-tumor immunity by breaking Treg-mediated immune tolerance.2018

    • 著者名/発表者名
      Hibino S, Chikuma S, Kondo T, Ito M, Nakatsukasa H, Omata-Mise S, Yoshimura A
    • 雑誌名

      Cancer Res

      巻: Epub ページ: Epub

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-17-3102

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Generation of allo-antigen-specific induced Treg stabilized by vitamin C treatment and its application for prevention of acute graft versus host disease model.2017

    • 著者名/発表者名
      Kasahara H, Kondo T, Nakatsukasa H, Chikuma S, Ito M, Ando M, Kurebayashi Y, Sekiya T, Yamada T, Okamoto S, Yoshimura A
    • 雑誌名

      Int Immunol

      巻: 29 ページ: 457-69

    • DOI

      10.1093/intimm/dxx060

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] CTLA-4, an Essential Immune-Checkpoint for T-Cell Activation.2017

    • 著者名/発表者名
      Chikuma S
    • 雑誌名

      Curr Top Microbiol Immunol

      巻: 410 ページ: 99-126

    • DOI

      10.1007/82_2017_61

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Blockage of Core Fucosylation Reduces Cell-Surface Expression of PD-1 and Promotes Anti-tumor Immune Responses of T Cells.2017

    • 著者名/発表者名
      Okada M, Chikuma S, Kondo T, Hibino S, Machiyama H, Yokosuka T, Nakano M, Yoshimura A
    • 雑誌名

      Cell Rep

      巻: 20 ページ: 1017-28

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2017.07.027

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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