我々はこれまで、①Notchリガンド:Dll4がパイエル板(PP)にて特徴的に発現すること、②パイエル板内のT細胞、特にFoxp3陽性の制御性T(Treg)細胞にNotch1シグナルが発動していること、③Dll4遺伝子欠失は、上記Notch1シグナルの消失をもたらすことを見出し、T細胞を介したPPでのIgA産生系におけるNotchシグナルの生理的意義について追求してきた。 今年度は、二次リンパ組織間葉系細胞にてCreを発現するCcl19-CreマウスをDll4-floxedマウスと交配し、PPでのDll4発現を調べた。その結果、Dll4の発現はほとんど認められず、遺伝子欠失は完全に誘導できた。しかし、T細胞に出現する活性化Notch1断片(N1ICD)は依然として認められ、Tfh細胞も正常に存在した。全身性のDll4遺伝子欠損マウス(RosaCre-ERマウス、Tam処理)ではほぼ完全にN1ICDが消失することから、PP間葉系細胞以外にDll4が発現し、Notch1を介したNotchシグナル発動に寄与していることが明らかになった。一方で、Notch1/2欠損T細胞がPPにてTfh細胞に分化できない現象における腸内細菌叢を含む環境要因を排除するため、Notch1/2欠損(CD45.1/1)および正常(CD45.1/2)Treg細胞を純化し、CD3e KOマウスへ移入し、同一個体においてPPでのTfh細胞への分化を調べたところ、正常細胞がTfh細胞に分化するのに対し、Notch1/2欠損T細胞はまったく分化せず、代わりにTreg細胞として存在することが示された。以上の結果から、PPでのTfh細胞分化にNotchシグナルは必須であることが明らかになった。
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