公募研究
本研究では、最も多種多様な常在微生物叢を形成している口腔を対象に、歯周病や口腔カンジダ症を病態モデルとしてネオ・セルフとして共生する微生物と生体における寛容ならびにその破綻のメカニズムの解明を目的としています。(1) 病原微生物のT細胞抗原エピトープの特定とネオ・セルフとしての役割:研究計画に従ってレーザーを購入して有効に活用することで、マルチカラーFACS解析を行いました。歯周病の原因細菌P. gingivalisを抗原として、樹状細胞に抗原提示させて、マウス由来のヘルパーT細胞を対象にTh17細胞への分化能をFACSにて評価しました。細菌の各種分画を逆相HPLCにて責任抗原が含まれる分画し、この分画成分を2次元電気泳動で分離し、特徴的なスポットを見出しました。さらにプロテオミクスにより候補抗原タンパク質を複数同定し、Th17細胞への分化能の高い抗原タンパク質の特定を進めています。一方、口腔内常在微生物である真菌C.albicansの菌糸形の細胞膜分画で活性化されたTh17細胞が口腔カンジダ症の発症を抑制していることを動物実験によって明らかにしました。共生する真菌が酵母形から菌糸形へと形態変化することで、ネオ・セルフとしての役割を果たしていると考えられました。(2) ネオ・セルフ依存的な疾患発症へと導く腸内細菌叢の役割:無菌マウスの腸内に胃ゾンデを用いて歯周病原細菌を投与した後、各種リンパ組織を採取し、歯周病原細菌に反応するTh17細胞の分化誘導についてSPFマウスと比較解析しました。腸内細菌叢がTh17細胞の分化誘導に重要な役割を果たしていることを見出しました。また、SPFマウスに抗菌剤を投与することで腸内細菌叢の一部を破壊して同様の解析を行い、免疫応答に変化を認める抗菌剤を見出しました。これら抗菌剤投与マウス群間の腸内細菌叢を次世代シーケンサーにて解析を開始しました。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画に従って平成29年度の本科研費で購入したレーザーを有効に活用することで、マルチカラーFACSでTh17細胞への分化能を解析することができました。それによって、責任抗原を含む分画を得ることができ、2次元電気泳動にて特異的なスポットを見出しました。さらに、プロテオミクスにより解析を進め、候補となる抗原タンパク質を複数同定し、本研究課題が大きく進展しました。また、歯周病における腸内細菌叢の役割について、無菌マウスを用いて評価を進めています。次年度に使用するセグメント細菌を入手しました。このように計画に沿って進行していることから、予定通りにおおむね順調に進展していると考えられます。
研究はおおむね順調に進行しており、予定通りの研究実施計画に従って研究を実施していくことで、成果をあげていきます。責任抗原をペプチドレベルで特定し、T細胞責任抗原を用いたネオ・セルフ疾患モデルマウスの作製を進めていきます。また、無菌マウスやノトバイオートマウスを用いて歯周病原細菌の口腔感染歯周病発症モデルマウスの解析を進めることで、腸内細菌叢の役割を明らかにしていきます。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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