研究実績の概要 |
T細胞が自己抗原の認識によって”セミ活性化状態”にある実態の解明とそれを誘導するシグナルと機序を解析することを目指した。樹状細胞(DC)を除去したマウス、あるいは抗MHC-II抗体を投与した正常マウスのT細胞は、抗原/MHCの刺激にも抗CD3/CD28抗体の刺激にも増殖やサイトカイン産生において低応答性が誘導される。この不応答状態が、自己ペプチドの認識の欠如によって誘導されるものであり、外来抗原特に腸管内細菌由来抗原に寄らないことを解析するために、MHC-II抗体を投与した、無菌マウス由来のT細胞の反応性を解析した結果、同様な低応答性を確認し、不応答状態は自己ペプチドの認識の欠如によって誘導されると思われる。自己ペプチドの認識による”セミ活性化”を誘導する活性化シグナルを解析するため、抗MHC-II抗体を投与したマウス由来の T細胞、またはMHC-II欠損マウスに正常マウスT細胞を移入したマウス由来のT細胞、を取り出し、ex vivoにおける種々のシグナル分子および転写因子の活性化を解析した。その結果、これらの自己認識が阻害されたT細胞では、T細胞受容体刺激の下流シグナル分子 Erk, p38, S6などのリン酸化が抑制されており、更にNFATc1/NFATc2の核内移行・活性化が抑制されることが判明した。即ち、自己ペプチド認識に伴って、少なくともこれらの分子が活性化シグナルとして働いていることが判明した。また、誘導される転写因子などの遺伝子発現を調べ、Egr-1, 2, 3, Nab-2などの発現が抑制されることが判明した。これらの結果から、自己ペプチド認識によってT細胞に誘導される活性化シグナルの実態の一部が初めて明らかになった。
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