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2017 年度 実績報告書

自己認識によるT細胞活性化の制御機構

公募研究

研究領域ネオ・セルフの生成・機能・構造
研究課題/領域番号 17H05806
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

斉藤 隆  国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, グループディレクター (50205655)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード自己ペプチド認識 / T細胞 / 活性化シグナル / 免疫寛容
研究実績の概要

T細胞が自己抗原の認識によって”セミ活性化状態”にある実態の解明とそれを誘導するシグナルと機序を解析することを目指した。樹状細胞(DC)を除去したマウス、あるいは抗MHC-II抗体を投与した正常マウスのT細胞は、抗原/MHCの刺激にも抗CD3/CD28抗体の刺激にも増殖やサイトカイン産生において低応答性が誘導される。この不応答状態が、自己ペプチドの認識の欠如によって誘導されるものであり、外来抗原特に腸管内細菌由来抗原に寄らないことを解析するために、MHC-II抗体を投与した、無菌マウス由来のT細胞の反応性を解析した結果、同様な低応答性を確認し、不応答状態は自己ペプチドの認識の欠如によって誘導されると思われる。自己ペプチドの認識による”セミ活性化”を誘導する活性化シグナルを解析するため、抗MHC-II抗体を投与したマウス由来の T細胞、またはMHC-II欠損マウスに正常マウスT細胞を移入したマウス由来のT細胞、を取り出し、ex vivoにおける種々のシグナル分子および転写因子の活性化を解析した。その結果、これらの自己認識が阻害されたT細胞では、T細胞受容体刺激の下流シグナル分子 Erk, p38, S6などのリン酸化が抑制されており、更にNFATc1/NFATc2の核内移行・活性化が抑制されることが判明した。即ち、自己ペプチド認識に伴って、少なくともこれらの分子が活性化シグナルとして働いていることが判明した。また、誘導される転写因子などの遺伝子発現を調べ、Egr-1, 2, 3, Nab-2などの発現が抑制されることが判明した。これらの結果から、自己ペプチド認識によってT細胞に誘導される活性化シグナルの実態の一部が初めて明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

自己認識を阻害する異なる系(MHC-II抗体投与、DC欠損マウスなど)において、T細胞の低応答性の誘導が確認された。この系を用いて、ex vivoのT細胞を解析することにより、抑制される活性化シグナルが初めて同定された。遺伝子発現においても、大きな差異を見いだし、このセミ活性化状態をより解明できるようになっている。

今後の研究の推進方策

今年度の成果に基づいて、以下の解析を進める。
(1)セミ活性化を誘導する因子の同定:自己認識によって活性化されるシグナル分子、および誘導される転写因子の幾つかが明らかになったので、それらから特に重要なものに着目してより詳細な解析を行い、強制発現させた場合に、自己認識の阻害によって誘導される不応答の誘導が阻害されるか、を解析する。
(2)生体内でのT-DC相互作用のイメージング解析:生体内での恒常的なT-DCの相互作用によるセミ活性化を解析するために、特にNFATの変化が見られたことから、直接、NFATの核内移行を活性化のマーカーとして解析する。また、CaセンサーFluo4でラベルしたT細胞をトランスファーして、T細胞とDCとの相互作用によるCa シグナルを解析する。これらによって、リンパ節において、トランスファーしたT細胞が何処で何時DCと接着・接触して活性化されるか、を解析する。
(3)T細胞不応答を回復させる活性化分子の検索:自己ペプチドの認識によるT細胞のセミ活性化の欠如によって 不応答状態アナジーに陥ったT細胞を再起させる方法を検索する。新たにDCとの接着することによって十分か、あるいは副刺激の欠損によって誘導される不応答T細胞のように、IL-2などサイトカイン刺激が必要なのか、更に副刺激受容体をはじめとする細胞表面分子をスクリーニングすることにより、T細胞の自己ペプチド認識によるセミ活性化に関与するDC上の分子を同定を試みる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Advax, a Delta Inulin Microparticle, Potentiates In-built Adjuvant Property of Co-administered Vaccines2017

    • 著者名/発表者名
      Hayashi Masayuki、Aoshi Taiki、Haseda Yasunari、Kobiyama Kouji、Wijaya Edward、Nakatsu Noriyuki、Igarashi Yoshinobu、Standley Daron M.、Yamada Hiroshi、Honda-Okubo Yoshikazu、Hara Hiromitsu、Saito Takashi、Takai Toshiyuki、Coban Cevayir、Petrovsky Nikolai、Ishii Ken J.
    • 雑誌名

      EBioMedicine

      巻: 15 ページ: 127~136

    • DOI

      10.1016/j.ebiom.2016.11.015

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Analyzing the Dynamics of Signaling Microclusters2017

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto-Tane Akiko、Yokosuka Tadashi、Saito Takashi
    • 雑誌名

      Methods Mol Biol

      巻: 1584 ページ: 51~64

    • DOI

      10.1007/978-1-4939-6881-7_4

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] CD4 CTL, a Cytotoxic Subset of CD4+ T Cells, Their Differentiation and Function2017

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Arata、Saito Takashi
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 8 ページ: 194

    • DOI

      10.3389/fimmu.2017.00194

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] STING activation induces inhibition of cell growth and production of type-I IFN2018

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Imanishi, Takashi Saito
    • 学会等名
      Keystone Symposia Conference T Cell Dysfunction, Cancer and Infection
    • 国際学会
  • [学会発表] Regulation of T cell activation and function by innate signals -STING activation in T cells induce growth arrest and IFN production2017

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Imanishi, Takashi Saito
    • 学会等名
      FASEB Summer Research conference: Signal Transduction in the Immune System
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular assembly and function of PTPN22 in T cell receptor signaling2017

    • 著者名/発表者名
      Akiko Hashimoto-Tane, Takashi Saito
    • 学会等名
      第46回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] TCR-signals control STING-mediated type 1 IFN responses in T cells2017

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Imanishi, Takashi Saito
    • 学会等名
      第46回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Regulation of T cell activation and function by innate signals2017

    • 著者名/発表者名
      Takashi Saito
    • 学会等名
      Seminar in Hokkaido University
    • 招待講演
  • [産業財産権] 免疫細胞の制御技術2017

    • 発明者名
      Takashi Saito, Takayuki Imanishi
    • 権利者名
      Takashi Saito, Takayuki Imanishi
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-028244

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公開日: 2018-12-17  

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