研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
17H05808
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西浦 博 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70432987)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 疫学 / 感染症 / 健康情報学 / 生物統計学 / 野生動物 |
研究実績の概要 |
これまでに理論疫学的手法によってリザーバの定義を可能にしてきた。ただし、これまでは動物種別のみを見たものであり、例えば、インフルエンザであればマガモがmaintenance hostであることを実証する程度しかできていない。実際には、マガモの中でも長距離移動の有無があることが知られているし、北極圏の水環境で伝播が起こりやすい一方で熱帯地域に近づくと感染頻度が下がることが知られている。申請者は過去にエラスムス研究所のインフルエンザウイルス研究者らと、ヨーロッパのフライウェイについて分析をしてきた。他方、アジアフライウェイについては十分な分析がない。そこで、渡り鳥のアジアフライウェイに対応した観察データの系統的レビューに基づくデータ収集を実施し、また、数理モデル構築において必要とされるパラメータ(例.気温に応じた水環境でのインフルエンザウイルスの失活度に関する生存曲線)について十分に定量化を行った。 1)北極および温帯地域のマガモが保有宿主の条件を満たすことを数理モデルによる疫学データ分析に基づいて客観的に証明することができた。また、オセアニア地域におけるマガモはインフルエンザウイルスの維持ができないことを実証した。 2)疫学的には伝播の「維持」を検討してリザーバを見ているが、系統樹ではゲノム情報から特定のウイルスのOrigin(の組み合わせ)を検討している。両方の知識が与えられたときのリザーバの定義はより精密で正確なものになると期待される。これまでに定義の定式化とデータ収集に取り組んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南北差を含むフライウェイでのインフルエンザのリザーバの特定の研究を予定通り公表することができた。研究成果は領域内の連携として共進化班 中川草先生らと、第 6回生命医薬情報学連合大会において感染症のバイオインフォマティクスに関するネオウイルス学研究成果のセッションを共同開催して発表した。初年度に提出した研究論文の出版が完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)初年度に提出した研究論文の出版に向けて改訂作業に取り組む。 2)具体的研究対象として計算が成立することを根拠に中東呼吸器症候群(MERS)の検討を実施したが、今後より対象を広げて検討をする予定である。
|