研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
17H05809
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
七戸 新太郎 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 助教 (80737148)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 原虫 / 二本鎖RNA / 内部共生 |
研究実績の概要 |
1)領域内連携によって非レトロdsRNA高感度検出法であるFragmented and loop primer ligated dsRNA sequencing(FLDS)法の技術支援を受けた。一方、初めてトリコモナスウイルスが見出されたTrichomonas vaginalis ATCC30001株に共生するウイルスの配列を決定した。2種類のトリコモナスウイルスが共生していることをRT-PCRで確認し、これらのトリコモナスウイルスの全長配列を決定した。FLDS法が原虫ウイルス探索に有用であることを示した。また同時に、新規ウイルスゲノム配列も見出した。この配列はこれまで報告されている原虫ウイルスと比較したところ、いずれとも相同性が低かった。新規ウイルスの可能性があるため、さらに解析を進めている。動物トリコモナス・動物トリパノソーマ・マウスマラリア原虫に共生するウイルスが存在するか否かをFLDS法を用いて探索した。培養・精製した20検体について調べたが、原虫ウイルス様配列は見つからなかった。 2)トリコモナスウイルスはトリコモナスの分裂とともに増殖する。我々が30回以上継代した後にもウイルスが持続感染していた。先行研究結果を鑑み、トリコモナスゲノムにウイルスゲノムが組み込まれている可能性について検討することにした。Trichomonas vaginalis ATCC30238株の全ゲノム配列をMinIONシークエンサーで解析したが、トリコモナスウイルスに内在化している配列は見つからなかった。これらの結果から、細胞分裂後にウイルスが増殖していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域内技術支援によって原虫内に共生するウイルスを探索する方法を確立することができた。原虫サンプルを用いてウイルス探索を行った。原虫ゲノムに内在化するウイルスゲノムを調べるために、トリコモナスの全ゲノムシークエンスを行なった。
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今後の研究の推進方策 |
1)マラリア原虫、トリパノソーマ、動物トリコモナスのサンプルをさらに増やしてウイルス探索を行う。具体的には、熱帯熱マラリア原虫の臨床分離株、人および動物由来トリパノソーマ、動物トリコモナスを新たに精製し、ウイルスゲノムの検出を試みる。また、Trichomonas vaginalisにおいて新規ウイルスゲノム様配列を見つけたことから、このウイルスゲノム検出の再確認を行うとともに系統解析等を行う予定である。 2)トリコモナスウイルスはトリコモナスゲノムに内在化していないが、他のウイルスゲノムが存在しているか否かさらに詳細な解析を行う。 3)ウイルス・原虫・宿主動物の相互作用を明らかにするために、以下のことを明らかにする。 a)継代によるウイルス除去は難しいと考えられるため、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)阻害薬を用いてウイルス除去を試みる。ウイルス感染・非感染トリコモナスのトランスクリプトーム解析を行い、ウイルスと原虫の相互関係を網羅的に調べる。得られた結果から、ウイルス感染に対する原虫の反応を明らかにする。(ウイルス・原虫相互作用) b)原虫ウイルスゲノム・カプシドが宿主細胞内センサー(Toll-like receptor(TLR)やRIG-I-like receptor (RLR))とどのような相互作用を引き起こすか調べる。(ウイルス・宿主動物相互作用) c)ウイルス感染・非感染トリコモナスをマウスに感染させることによって、ウイルス存在・非存在下でどのような違いが見られるのかを明らかにする。(ウイルス・原虫・宿主動物相互作用)
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