研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
17H05810
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
福田 智一 岩手大学, 理工学部, 教授 (40321640)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 無限分裂細胞 / 遺伝子導入 / 感染症 / 絶滅危惧種 |
研究実績の概要 |
オガサワラオオコウモリの初代培養細胞を使用し無限分裂細胞へ変化させるために以下の結果を得た。 1) オガサワラオオコウモリの初代培養細胞へ導入するための条件の最適化:オガサワラオオコウモリの初代培養細胞を用いて遺伝子導入するための最適条件を探索した。興味深いことにレンチウィルスでは極めて導入効率が低いがVSV-Gエンペロープを持つレトロウィルスによって効率良く遺伝子導入できることが明らかになった。 2) 導入遺伝子のタンパク質レベルでの検出: 導入した変異型CDK4、サイクリンD遺伝子産物を検出するためにウェスタンブロットにて検出を行った。期待される分子量の部分に特異的シグナルを認め、変異型CDK4とサイクリンD遺伝子が導入されタンパク質へ翻訳されていることを検出した。またPCR法を用いてゲノム中に発現カセットが効率良く導入されていることを検出した。 3) テロメラーゼ活性の検出: TERTを導入した後にストレッチPCR法にてテロメア配列を延長する活性、すなわちテロメラーゼ活性を検出した。TERTを導入した細胞では特異的にDNAラダーが検出されテロメア配列を延長する活性が検出された。 3) 連続パッセージによる無限分裂化の検出: 初代培養細胞および遺伝子導入した細胞をSide by Sideに一定数の細胞を同時に播種、1つの細胞でもコンフルエントに達した場合、全ての細胞を剥離し細胞数をカウントし、また一定数の細胞を播種する。この操作を連続的に行うことによって、細胞増殖の速度および継代可能なパッセージ数を明らかにする。現在、連続継代培養を行い無限分裂に至っているか検出中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初の目標であった遺伝子導入効率の最適化、導入遺伝子産物の検出、テロメラーゼ活性の検出、連続パッセージによる無限分裂の検出までに至っている。進捗状況としておおむね当初の予定通りに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)連続パッセージによる無限分裂化の検出: 初代培養細胞および遺伝子導入した細胞をSide by Sideに一定数の細胞を同時に播種、1つの細胞でもコンフルエントに達した場合、全ての細胞を剥離し細胞数をカウントし、また一定数の細胞を播種する。この操作を連続的に行うことによって、細胞増殖の速度および継代可能なパッセージ数を明らかにする。細胞老化の指標であるSA(Senescence Associated beta-gal)染色を行い、作成した細胞が無限分裂化への有無を検出する。この操作は時間が必要であるので平成30年度も継続して行う。
2)核型解析: 初代培養細胞および無限分裂を誘導した細胞を核型解析を行い、オリジナルの核型を維持しているかどうかを明らかにする。我々の従来の結果では、ハタネズミではゲノム不安定性が検出されたがその他の動物であるサル、ブタ、ウシ、ウミガメ、スイギュウのいずれも染色体異常は検出されていない。変異型CDK4、サイクリンD、TERTを使用した無限分裂誘導方法ではp53遺伝子の機能がそのまま保持され、チェックポイント機能が保存されるため元の核型を維持できると考えられる。20-50分裂体を対象に解析しゲノム不安定性の有無を明らかにする。
3)シュードタイプウィルスを用いた増殖試験: 得られた無限分裂細胞へシュードタイプウィルスを用いた増殖試験を行う。コウモリ由来の無限分裂細胞を用いてウィルスが増殖することを確認する。同時にヒト由来の細胞とウィルス増殖の比較を行い、細胞における種差の有無を明らかにする。
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