研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
17H05811
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
望月 智弘 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (90748279)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超好熱菌 / 古細菌 / ウイルス / 培養 / 環境微生物 / アーキア |
研究実績の概要 |
生物界は古細菌・細菌・真核生物の3ドメインに大別され、それぞれにウイルスが存在する。細菌と古細菌を宿主とするウイルス(ファージ)は既に数千株以上が単離培養済みで、大きな知見が蓄積されており、細菌ウイルス(ファージ)は10科、真核ウイルスは約80科に分類されている。一方、生物界第三のドメインと称される古細菌を宿主とするウイルスの培養株は、レモン型、ワインボトル型、バネ型等、驚くべき形状多様性を有しているばかりか、分類学上も15科に及んでおり、同じ原核生物である細菌を宿主とするウイルスとは大きく異なる独自のウイルス叢(virosphere)を形成していることが明らかとなっている。しかしながら古細菌ウイルスの培養株は僅か100株ほどであり、その全体像は未だ明らかにされていない。 本研究では、熱水系に生息する超好熱古細菌を中心に、広く水圏単細胞微生物を宿主とする新規ウイルスの探索を行う。 昨年度は、国内各地の熱水環境(温泉)から環境試料を採取し、90℃で良好に増殖する新規超好熱古細菌、ならびにそのウイルスの単離を行った。これまでに超好熱古細菌を宿主とする新規ウイルス5株が得られており、その全てが分類学上異なる科に属し、うち4つはウイルス分類学上事実上最上位の分類群である「新科」に属するものであることを示唆するデータが得られている。さらにそのうち1株は、そのウイルスゲノム核酸が、通常超好熱古細菌ウイルスにおいて広くみられる二本鎖DNAとは異なる核酸型であることを示唆するデータが得られており、今後詳細な解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
世界的にも未だ単離培養株が乏しい好超好熱古細菌を宿主とする新規ウイルス5株の単離培養に成功した。特筆すべきはその全てがウイルス分類学上事実上最上位の科(family)レベルで異なるものであり、うち4つは新科に属することが示唆されている。さらに核酸型が通常の二本鎖DNAとは異なるものが得られている可能性が大いにあるなど、当初の期待以上の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム配列が既に得られている新種2株(共に約18kbpsの二本鎖DNAウイルス)に関しては、殻タンパク質の遺伝子と脂質の組成解析を行う。新たに単離された3株については、ゲノム配列の解読、殻タンパク質遺伝子の同定、宿主域の評価など一連の性状解析実験を行う。さらに、核酸型が通常超好熱古細菌ウイルスにおいてみられる二本鎖DNA型ではないことが示唆されているウイルス株については、核酸型の同定、必要に応じて一本鎖DNAの方向性の決定などを行う。これらの諸性状を解析した上で、国際ウイルス分類委員会(ICTV)に新科、新属、新種の登録を行う。 また、この数か月以内に北中米、欧州の熱水試料も入手できたため、個々のウイルスの地球規模での分布・多様性解析を行うため、これらの試料からも近縁種ウイルスの単離を試みる。さらに今年度は、深海熱水噴出孔の試料を用いてより広範な超好熱古細菌を宿主としたウイルス単離実験を試みる。
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