公募研究
野外環境中における植物は,ウイルス・真菌・細菌を含む,多種類の病原・非病原微生物叢との相互作用によってその生理状態が規定される.本研究は,このような「エコ・スフィアー」におけるレギュレーターとしての,植物ウイルスの役割の解明を目的とする.特に,ある種の植物ウイルス( red clover necrotic mosaic virus: RCNMV )が細菌・糸状菌に対して有効な植物免疫システムへ干渉することに着目し,ウイルス・植物を含む多者間相互作用を分子レベルで明らかにすることを目指す.植物は,微生物由来の分子パターン (PAMPs) を異物として認識し,免疫反応を活性化する機構を持っている.平成29年度に行った解析から,RCNMV感染が糸状菌/細菌由来PAMPs誘導性免疫応答アウトプットに及ぼす影響を明らかとした.また,RCNMV感染が植物体における糸状菌の病斑形成ならびに細菌増殖に対して及ぼす影響について解析した.さらに,MAPK活性化を指標として植物免疫に干渉するコアウイルス因子の同定を行った.その結果,ウイルス複製酵素タンパク質p27が植物免疫に影響を与える責任因子であることが明らかとなった.そこで次に,p27によるPAMPs誘導性MAPK活性化への干渉機構に迫るため,宿主因子の解析を行った.その結果,p27と相互作用し,かつp27と同様にPAMPs誘導性MAPK活性化を制御する宿主因子を同定することができた.
2: おおむね順調に進展している
RCNMVがPAMPs誘導性免疫に及ぼす性状ならびにコアウイルス因子を平成29年度に行った解析から明らかにすることができ,植物ウイルス感染が実際の糸状菌/細菌感染に対して及ぼす影響を明らかとすることができた.また,コアウイルス因子と相互作用する宿主因子のPAMPs誘導性免疫における役割の解析も進んでおり,順調に進捗していると判断される.
これまでに得られた結果から,RCNMVは宿主因子を介して植物免疫を撹乱し,植物―細菌/糸状菌間の相互作用に影響を与える可能性が考えられる.本仮説を実証するために,RCNMVあるいはp27発現時における宿主因子の動態や,p27による植物免疫の撹乱に宿主因子が必要かどうかを検証する.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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