研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
17H05820
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柳 雄介 九州大学, 医学研究院, 教授 (40182365)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パラミクソウイルス / シアル酸 / 糖鎖 / 受容体 / ムンプスウイルス |
研究実績の概要 |
シアル酸を受容体として使うパラミクソウイルス科のウイルス(レスピロウイルス属、ルブラウイルス属、アブラウイルス属に分類されるウイルス)の受容体糖鎖構造の多様性を明らかにすることを通して、これらのウイルスがどのように宿主動物や標的細胞に適応し、それらと共進化しているかを解明することを目的として研究を行っている。 1)約600種類の糖鎖をもつglycan arrayを用いて、ムンプスウイルスの受容体結合蛋白質(HN蛋白質)に結合するポテンシャルのある糖鎖構造を網羅的に解析し、ムンプスウイルスの受容体として機能する糖鎖コア構造を明らかにした。他のパラミクソウイルスでも同様の実験を行うため、それぞれのウイルスのHN蛋白質の大量発現と精製を進め、ほぼ完了した。 2)上記のglycan arrayの実験結果に基づいて、ムンプスウイルスHN蛋白質と受容体として機能する数種の糖鎖の複合体のX線結晶構造を決定した。それらを詳細に解析することにより、ムンプスウイルスのHN蛋白質による糖鎖受容体の分子認識の構造基盤を解明した。 3)酵素欠損により特定の糖鎖構造を欠損している数種の細胞株を用いて、ウイルスのエンベロープ糖蛋白質(HN蛋白質とF蛋白質)の発現による膜融合アッセイを行った。その結果、異なるパラミクソウイルス間で、それぞれのウイルスが認識するシアル酸を含む糖鎖受容体の構造に共通性と多様性が存在することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的としているパラミクソウイルスの糖鎖受容体構造の詳細を、glycan array、X線結晶構造解析、エンベロープ糖蛋白質発現による膜融合アッセイなどを通して多方面から明らかにできた。ムンプスウイルスについては、これらの解析がほぼ終了しているが、他のパラミクソウイルスでも同様の解析を進めることで、シアル酸を受容体として使うパラミクソウイルス全体の多様性が明らかになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)ムンプスウイルス以外のパラミクソウイルスでも、精製したHN蛋白質とglycan arrayを用いた網羅的な糖鎖結合解析を行い、それぞれのパラミクソウイルスが結合する糖鎖コア構造を明らかにする。 2)上記のglycan arrayの結果に基づき、ムンプスウイルス以外のパラミクソウイルスのHN蛋白質と糖鎖受容体の複合体のX線結晶構造解析を行うことで、パラミクソウイルスの糖鎖受容体認識の多様性と共通性を明らかにする。 3)糖鎖欠損細胞株を用いた膜融合アッセイを用いて、種々のパラミクソウイルスの糖鎖受容体認識の多様性と共通性を細胞レベルで比較解析する。 4)パラミクソウイルスの宿主動物種の標的臓器や組織、あるいはそれを最もよく反映すると考えられるprimary cultureや培養細胞の糖鎖構造のglycan profiling(質量分析による糖鎖の詳細な構造解析)を行い、それぞれのウイルスが認識する糖鎖構造と宿主域やトロピズムの関係を検討する。 5)得られたすべての実験結果を総合して、パラミクソウイルスの進化適応について検討する。
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