研究実績の概要 |
シアル酸を受容体として使うパラミクソウイルス科のウイルスの受容体糖鎖構造の多様性を明らかにすることを通して、これらのウイルスがどのように宿主動物や標的細胞に適応し、それらと共進化しているかを解明することを目的として研究を行った。約600種類の糖鎖をもつglycan arrayを用いて、ムンプスウイルスの受容体結合蛋白質(HN蛋白質)に結合する可能性のある糖鎖構造を網羅的に解析し、アルファ2,3結合型シアル酸を末端にもつ三糖構造が、ムンプスウイルス受容体のコア構造であることを明らかにした。さらに、この三糖構造に類似の構造をもつ結合糖鎖モチーフがいくつか同定された。三糖(3'-sialyllactose, 3'-SL)及びこれらの結合糖鎖モチーフとHN蛋白質の共結晶構造を解明したところ、HN蛋白質はある程度の柔軟性をもってこれらすべての糖鎖と基本的には同一の結合様式で結合していることが分かった。3'-SLやこれらの糖鎖モチーフを添加すると、ムンプスウイルスの細胞侵入が効率よく阻害されたので、これらの分子は確かに受容体として機能していると考えられた。3'-SLや上記の糖鎖モチーフの組織分布の違いがムンプスウイルスの腺組織や中枢神経系への組織特異性に関わっている可能性が示唆される。シアル酸を受容体とする他のパラミクソウイルスについても、glycan arrayを用いてそれぞれのHN蛋白質と結合する糖鎖構造を解析し、ウイルス間で結合する糖鎖構造に共通性と多様性があることが明らかになった。
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