研究実績の概要 |
本研究は真核生物ゲノムに内在化したレトロウイルス以外のウイルスに由来する配列を網羅的に同定し、その発現や機能について調べることを目的とする。現在までに真核生物4,102ゲノム配列に対してウイルス(レトロウイルスを除く)7,007ゲノム配列をBLASTN総当りで探索した。その結果、ウイルスゲノムのおよそ半数(3,856種)に何らかの真核生物に類似配列が存在し、真核生物のほぼ全て(4,098種)がウイルス様の配列を持つことが分かった。ただ、この中にはEVE以外にもウイルスが宿主から水平伝播により獲得した配列、その他ゲノム配列決定の際に混入したと考えられる配列なども多く含んでいた。特に二本鎖DNAウイルスの一部の配列にほぼ全ての真核生物に共通する配列があったが、これはheat shock protein 70に由来していて、ウイルスが宿主から獲得した配列であると考えられた。本解析で同定した配列を系統ごとにまとめ、データベースとして一般に公開した(pEVE, http://peve.med.u-tokai.ac.jp)。また、関連する論文もVirus Research誌に投稿し、受理された。 加えて領域内での共同研究も取り組み、1)水禽類の糞便サンプルのメタゲノム配列データを解析し糞便の由来となった生物種の同定を行った、2)エボラウイルスなどを含むフィロウイルスやネコレンチウイルス(FIV)の宿主・ウイルス共進化について、分子進化解析や立体構造予測解析を行い、感染制御に関する自然選択と塩基変異を解析した、3)ゾウのゲノムに内在化したボルナウイルスのN遺伝子(EBLN)の機能を明らかにするためRNAiで発現を抑えた細胞とコントロールの細胞それぞれのRNA-seqデータを解析を行った。
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