本研究では、昨今相次いで発見される巨大ウイルスにスポットを当て、その形態を、電子顕微鏡(電顕)を用いて分子レベルで解析し、既知のものと合わせて比較分類することによって構造学的な系統進化図を作成する。 1.「トーキョーウイルス(TkV)」の構造解析:本解析には、大阪大学超高圧電顕センターの1000kV超高圧クライオ電顕を用いたが、データ収集を開始した直後の6月に発生した大阪北部地震のため、装置が利用できなくなったため、それまでに記録した約400枚の画像で限定的な解析を行った。結果、1.6 nm分解能の粒子構造を明らかにすることができた。TkVの主要キャプシドタンパク質(MCP)はミドリゾウリムシに寄生したクロレラに感染する巨大ウイルスPBCV-1のそれと相同性が高いことが判明し、この構造モデルからTkV MCPのホモロジーモデルを作製し、得られた電顕マップにフィットさせた。その結果、TkV粒子は、MCP同士がエリアによって異なる相互作用をして、巨大正二十面体構造を形成していることがわかった。 2.「メドゥーサウイルス(MedV)」の構造および粒子形成過程の解析:我々が新規に発見したMedVのクライオ電顕構造解析、および粒子形成過程の形態解析を行った。結果、約3nm分解能の粒子構造を得ることができ、本ウイルスは、各MCPから針状の突起を伸ばしていることがわかった。また、MedVが感染した宿主アメーバ内には空のウイルス粒子が多数観察されたことから、このウイルスはゲノムの複製とゲノムのパッケージングが核と細胞質で独立に行われることが示唆された。 以上の結果、これらの新規の粒子構造は、ゲノム系統樹とは異なる近縁関係を示すことが明らかになってきた。
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