研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
17H05826
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
矢原 耕史 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (70542356)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ファージ / ヴァイローム / 組換え / 進化 / 細菌 / ゲノム / 自然選択 / 口腔 |
研究実績の概要 |
地球上のウイルスの多様性と総体(Earth's virome)に関して、2016年8月のNatureの論文(Paez-Espino et al)で発表された12万本以上(既知の50倍以上)の塩基配列データを、ファージ(細菌に感染するウイルス)のゲノムの組換えに注目して解析した。具体的には、宿主細菌が種レベルで推定された211のウイルスグループ(種)を抽出し、パンゲノム解析によって、全遺伝子を対象に組換えの痕跡を検出した。そして、組換えの頻度(/塩基)と、宿主菌の免疫機能(外来ウイルスのゲノムを切断・分解する制限酵素、獲得免疫機構であるCRISPR-Cas)、および宿主菌の生息環境との関係を解析した。 その結果、84%のウイルスグループで組換えが検出された。そのうち25のウイルスグループで組換えが特に高頻度に検出され、それらは、ウイルスの大系統樹の中で幅広く分布し、口腔細菌を宿主としており、宿主細菌種のII型制限酵素の頻度と逆相関していた。さらに本研究では、組換えが特に高頻度に検出される遺伝子を同定し、それらがファージの形態形成に関する遺伝子に有意に多いことを明らかにした。口腔内には、口腔細菌の獲得免疫機構であるCRISPRのスペーサーが少なくとも数十万個転写されていることが知られており、口腔細菌を宿主とするファージは、ゲノムの頻繁な組み換えによって宿主の免疫系から逃れ続けている可能性が考えられた(論文投稿中)。 次に、細菌とウイルスが最も高密度に存在すると言われてきた口腔について、両者のバランスの乱れと疾患との潜在的な関係を探るために、健常者と患者の唾液をdeep sequencingし、両者の細菌叢とウイルス叢を比較する研究を開始した。主施設・共同研究施設での倫理委員会の承認と、酵素法による唾液からのDNA抽出の検証までを終えた段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り進展している。特に、本プロジェクトを通じて新たに、Leibniz InstituteのJan P. Meier-Kolthoff博士と共同研究を行い、論文をまとめることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画通りの進捗が得られるよう、日々出来る限りの努力する。
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