研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
17H05830
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
吉田 光宏 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 技術副主任 (60565555)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 深海堆積物 / 一本鎖DNAウイルス / ゲノム定量 / 海洋微生物 / メタゲノミクス |
研究実績の概要 |
環境未知DNAウイルス群の生態、宿主や環境との相互作用を明らかにするため、本研究では、一本鎖DNAタイプをも標的とする分子生態学的ウイルス群集解析手法による革新的アプローチを導入し、海洋環境に生息する本ウイルスタイプの群集構造や多様性、地理的分布等の生態学的知見の収集を目的としている。 本年度は、一本鎖タイプと二本鎖タイプのDNAウイルス群集を定量するための新たなゲノミクスアプローチを考案し、東北沖(500 m以深)表層堆積物サンプルに対して本アプローチを実践した。サンプルから抽出したトータルウイルスDNAより、一本鎖DNAと二本鎖DNAを別々に回収した後、それぞれメタゲノム解析を行った。その結果、一本鎖DNAウイルスメタゲノムにおいて一本鎖DNAウイルス(Microviridae科ファージやCircoviridae科ウイルスなど)が多くを占める一方、二本鎖DNAウイルスメタゲノムからは二本鎖DNAウイルス(主にCaudovirales目に属する典型ファージ)が多くを占めることを確認した。このように、両者のメタゲノムは異なっており、それぞれのウイルス群集像を個別に明確化することが可能であった。次に、両タイプのウイルス核酸量を定量し、ウイルス1粒子に含まれるDNA量の情報をもとにウイルス量を算出した。二本鎖DNAウイルス量の値は、本タイプを標的とする直接計数の値とほぼ類似しており、妥当な結果が得られた。一本鎖DNAウイルス量については、計数値をはるかに上回る量が認められ、少なくとも200倍多く見積もられた。このことから、本ウイルスタイプが深海堆積物表層環境下で優占していることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、新規“一本鎖DNAウイルス定量法”の開発に成功した。本技術の使用により、一本鎖DNAウイルスと二本鎖DNAウイルスの両群集について、ウイルス量と組成に関するデータを収集することが可能になった。さらに、深海堆積物表層部のDNAウイルス群集内には、99%以上もの数を占める一本鎖DNAウイルスが存在することが明らかとなった。また、海洋表層生態系において、一本鎖DNAウイルスの現場感染を示唆する直接的証拠を得るとともに、細胞画分より相当量の新たな遺伝子プールの発見に成功した。こうした知見の取得を踏まえ、当初の計画どおり研究を遂行できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の遂行により、一本鎖DNAウイルスの現場感染を示唆する直接的証拠を得るとともに、細胞画分より相当量の新たな遺伝子プールの発見に成功した。今後、細胞外の両画分とのメタゲノム比較・検討を行うことにより、環境下において活動的な本群系統タイプに関する遺伝情報を取得・特定し、かつ内在性“ネオウイルス”の探索も試みる。
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備考 |
JAMSTEC機関リポジトリ: 海洋研究開発機構で生み出された学術雑誌論文、紀要論文、会議発表用資料、図書等の知的生産物を電子的な形態で保存し、公開するシステム(OAI-PMH準拠).
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