環境未知DNAウイルス群の生態、宿主や環境との相互作用を明らかにするため、本研究では、一本鎖DNAタイプをも標的とする分子生態学的ウイルス群集解析手法による革新的アプローチを導入し、海洋環境に生息する本ウイルスタイプの群集構造や多様性、地理的分布等の生態学的知見の収集を目的としている。 本年度は、昨年度に開発した一本鎖DNAウイルス定量法を海水試料に適用するために、昨年時にウイルス粒子の濃縮回収・精製法ならびにゲノム抽出・分画法を含む、各作業工程について最適化を行った。最適化した本技術を用いて、東京湾の表層海水サンプルを調査したところ、一本鎖DNAタイプが全体の97~99%を占めており、海洋の水圏環境でも本タイプが優占していることが明らかになった。また、細胞画分についても調べた結果、海水試料1 mLにおける細胞外画分中の量と同程度の一本鎖DNAウイルス核酸量が認められた。こうして、本タイプが現場で感染していることを実証するデータを取得するとともに、環境中の細胞内環境において相当量の新たな遺伝子プールの発見に至った。さらに、細胞画分のウイルスメタゲノムの組成を細胞外画分のそれと比較した結果、一本鎖DNAタイプに属する新規の共存型“ネオウイルス”個体群の集団が宿主細胞内環境下においてのみ生息していることを突き止めた。
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