研究領域 | 植物新種誕生の原理―生殖過程の鍵と鍵穴の分子実態解明を通じて― |
研究課題/領域番号 |
17H05832
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井川 智子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (00360488)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 重複受精 / 配偶子相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では、雄性配偶子で特異的に発現するLGM1の機能解析を行い、LGM1が受精因子であるかを検証することを目的としている。LGM1はユリおよびシロイヌナズナの花粉発生において雄原細胞期から発現を開始し、シロイヌナズナにおいては精細胞の細胞膜に局在することが示されている。当研究室ではLGM1ノックダウン(発現抑制)精細胞の、重複受精における表現型を調査した結果、片側受精が観察され、特に卵細胞の受精阻害を示唆する結果が得られていた。 平成29年度はLGM1ノックダウン精細胞の重複受精における挙動を詳細に解析した。in vitro培養により重複受精を再現しつつ、LGM1ノックダウン精細胞の受精中の挙動を継時的に観察した。その結果、受精阻害が観察され、LGM1が受精因子として機能することが決定付けられた。さらに、in vivo条件下で受粉後9ー10時間目において胚珠内のLGM1精細胞を観察した結果、卵細胞との受精阻害が有意に観察された。平成29年度では受精できなかったLGM1ノックダウン精細胞が雌性配偶子との接着までを達成しているかどうかを調査するため、接着アッセイに着手した。また、更なるLGM1の機能解析に使用するため、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いてLGM1ノックアウト(遺伝子破壊)株を作出した。 LGM1についてはこれまでに研究知見がなく、タンパク質機能も未知である。本研究では分子機能追究の初段階として、膜タンパク質であるLGM1のトポロジー解析を行った。その結果、LGM1が偶数個の膜貫通領域を有することを示唆する結果が得られている。 平成30年度は引き続きLGM1の機能およびトポロジー解析を継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画では、重複受精におけるLGM1ノックダウン精細胞の詳細な表現型解析によって「LGM1が受精因子として機能するか」の科学的な検証を目的としていた。その結果、LGM1が新規の受精因子であることが決定付けられ、目的を達成している。また、平成29年度計画にはLGM1ノックアウト株作出およびLGM1のトポロジー解析を含めている。LGM1ノックアウト株の作出にも成功しており、トポロジー解析についても、概ね計画どおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
LGM1が新規の受精因子であることが決定付けられたが、重複受精時の配偶子相互作用においてどの段階に関与しているかを、接着アッセイによって明らかにする。 LGM1のノックアウト株を用いて、LGM1が受精因子として機能するアミノ酸領域を解析する。また、既知の受精因子との関係についても調査する。
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