研究領域 | 植物新種誕生の原理―生殖過程の鍵と鍵穴の分子実態解明を通じて― |
研究課題/領域番号 |
17H05833
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
土松 隆志 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (60740107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自家不和合性 / 自殖 / 集団ゲノミクス |
研究実績の概要 |
平成29年度はおもに以下の3つの課題について研究を行った: (1) 自家不和合性の鍵と鍵穴システムのゲノム解析:国際共同研究によるリシークエンス解析から,もっとも祖先的かつ遺伝的多様性の高いシロイヌナズナ集団がアフリカ・地中海地域にあることを発見した.さらに,自家不和合性に関わる遺伝子座(S遺伝子座)の集団遺伝学的解析を行ったところ,シロイヌナズナにおける自家不和合性から自家和合性の進化がアフリカ集団の共通祖先(10万年以上前)にまで遡ることを明らかにした(Tsuchimatsu et al. 2017 Mol Biol Evol; Durvasula et al. 2017 PNAS). (2) ゲノムワイド関連解析(GWAS)による自殖に関わる花形質の遺伝変異の解析:清水グループ(瀬々班)と共同で,ゲノムワイド関連解析から花粉数に関わる遺伝変異の解析を行っている.花粉数に関わる遺伝子座について集団遺伝学的解析を行うことで,花粉数が減少する方向に自然選択が起きてきたことを明らかにした(論文投稿中).さらに,アフリカ・地中海に由来する約100系統について自殖に関わる花形質の表現型計測を完了した.現在,これらの形質についてゲノムワイド関連解析を行っている. (3) 進化シミュレーション解析による,鍵と鍵穴システムや自殖の進化の過程の再現:高山班と共同で,ナス科自家不和合性システムにおける鍵・鍵穴の進化過程についてのシミュレーション解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S遺伝子座については論文がすでに出版された.また,アフリカ系統について花形質の表現型計測が完了するなど順調に進んでおり,今後はそのデータについて詳しくゲノムワイド関連解析を実施する.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,特に以下の課題に取り組む. (1) 自殖に関わる花形質のゲノムワイド関連解析およびQTL解析:アフリカ系統について,自殖に関わる花形質の測定を平成29年度に完了した.本年度はそのデータを詳しく解析し,形質変異に 関わる遺伝子の探索を行う.また,極端な表現型を示す系統について掛け合わせを行い,F2集団を作出,QTL解析を行う. (2) 生殖に関わる遺伝子群の分子進化学的解析 自家不和合性遺伝子(S遺伝子)を始め,受粉過程・花粉管伸長・受精後生殖隔離等に関わる遺伝子群の分子進化的解析を祖先的シロイヌナズナ系統について実施し,自殖の進化の初期過程のおける生殖関連遺伝子の進化パターンを考察する.
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