研究領域 | 植物新種誕生の原理―生殖過程の鍵と鍵穴の分子実態解明を通じて― |
研究課題/領域番号 |
17H05835
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 拓也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50596559)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 植物 / 花成誘導 / 転写因子 / X線結晶構造解析 / 蛋白質間相互作用 |
研究実績の概要 |
植物ホルモンのジベレリン(GA)は、植物細胞の伸長制御に機能するだけでなく、植物の有性生殖に必須な栄養成長から生殖成長への相転換、性決定、花粉管の伸長等の生殖過程の制御においても決定的な役割を果たしており、細胞内GA濃度と連動したDELLAと各転写因子の複合体形成・解除がGAによる生殖過程の制御を説明する上で重要なイベントであるといえる。本研究では、DELLAがその分子内のGRASドメインを用いて、花成の誘導に機能する多様な転写因子とどのように複合体を形成するのか、その構造基盤を解析することでGAによる生殖過程の転写制御の「鍵と鍵穴」の仕組みを理解することを目的としている。 AlphaScreenを用いた分子間相互作用解析によりDELLAと相互作用する新規転写因子が同定された。この転写因子は花分裂組織の形成と発達を制御するC2C2型zinc fingerファミリーであり、花器官形成においてDELLAを介した転写活性の調節とGAによる応答機構の存在が示唆された。また、ブラシノステロイド(BR)シグナル伝達のマスター転写因子がDELLAと複合体を形成することが確認された。BRは伸長制御だけでなく、葯・花粉の発達に関わる遺伝子の転写調節等にも機能することから、DELLAを介した生殖過程における植物ホルモンクロストークが示唆される。花芽形成においてDELLAと相互作用する転写因子及びDELLA-転写因子複合体の構造解析を進め、C2H2型zinc fingerファミリー転写因子IDDの相互作用領域の立体構造を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りにDELLAと各種転写因子の相互作用解析を実施し、DELLAと複合体形成可能な複数の転写因子を見出している。また、DELLAと相互作用する一部の転写因子については、相互作用領域の立体構造を決定することができ、DELLA-転写因子複合体のX線結晶構造解析に向けて結晶化実験が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究においてDELLAとの複合体形成が既に確認されている転写因子を中心に、引き続きDELLAとの複合体のX線結晶構造解析に取り組み、DELLAによる生殖過程の転写制御機構の解明を目指す。また、DELLAと相互作用する転写因子において、植物特異的なDNA配列認識機構が示唆されているため、この転写因子と標的DNAのX線結晶構造解析に取り組み、転写因子とDNAの新規な「鍵と鍵穴」の機構解明を目指す。
|