研究実績の概要 |
有性生殖を行う多くの被子植物では、父親が作る精細胞と、母親が作る卵細胞が融合することで、新しい世代である受精卵が生まれ、それが細胞内極性の獲得から始まる一連の体軸形成過程を経ることで、適切な植物体の形を作り上げる。この発生の初期過程において、父母に由来する因子群が胚発生の何を担うかを理解するべく、被子植物であるシロイヌナズナにおいて、父母の両方から受精卵に持ち込まれて体軸形成を制御するWRKY2転写因子と父親(精細胞)からのみ持ち込まれる偽キナーゼであるSSP、母親(卵細胞)のみに由来するHDG11/12転写因子の三者に着目して研究をおこなった。それぞれの相互作用を詳細に判定するとともに、各因子の変異体や機能改変株を用いて精査した結果、これらが協調的に働くことで、WOX8遺伝子の転写が活性化され、受精卵の極性や胚の体軸が確立されることが明らかになった。また、これらの下流で、受精卵の極性化から始まる体軸形成が駆動される動態を可視化する方策として、シロイヌナズナを用いて、植物の受精卵の内部を高精細にライブイメージングする方法論を構築した(Ueda et. al., 2020)。この新規ライブイメージング手法や、これを用いて見出した細胞内動態について、多くの国内外の学会で発表するとともに、学術誌での公表にも至った(Kimata and Ueda, 2020)。さらに、さまざまな細胞内事象を可視化したマーカーの構築を進めており、これらをライブイメージングすることで見出した体軸形成過程の詳細について、現在論文を執筆中である。
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