研究領域 | 認知的インタラクションデザイン学:意思疎通のモデル論的理解と人工物設計への応用 |
研究課題/領域番号 |
17H05854
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
並木 明夫 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40376611)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 知能ロボティックス / エアホッケーロボット / ヒューマンロボットインタラクション / 最適動作戦略 |
研究実績の概要 |
本年度は下記の研究を行った。 A)対戦相手の行動計測と動作戦略のモデル化 エアホッケーの対戦相手のモーションを実時間計測することを目的として次の研究を行った。(1) 対戦プレイヤーの上半身の姿勢計測を高速化するために,デプスセンサによる距離画像と高速ビジョンによる500Hz高速画像を拡張カルマンフィルタにより統合する手法を提案し,500 Hz での姿勢計測推定を可能にした。(2) 対戦プレイヤ―の姿勢計測結果を利用して,対戦プレイヤーの打ちにくい場所にパックを打ち返す打撃戦略を提案した。具体的には,対戦プレイヤーの腕の姿勢を可操作性指標に基づいて評価し,腕の動かしづらい領域を推定し,その位置に打ち返すようにした。 B)エアホッケーロボットにおける対戦プレイヤーの認知能力を考慮した動作戦略の開発 従来は腕や球の速度といった物理的な条件のみを考慮してロボットの動作戦略を生成していたが,新たに対戦プレイヤーの認知能力を考慮した動作戦略アルゴリズムを提案した。ロボットの攻撃に対する対戦プレイヤーの予測能力について考慮し,ゲーム中の「慣れ」が予測に与える影響をモデル化し,それに基づく動作戦略を実装した。具体的には,(1) 対戦プレイヤ―の動作モードの変更時点を推定するために,ChangeFinderによる異常検知手法を開発した。(2)(1)の変更点検出とリカレントニューラルネットワーク(RNN)により,ロボットの返球パターンに対する対戦プレイヤーの反応速度を学習した。(3) 学習済みRNNモデルを用いて意思決定を行う動作戦略を実装した。結果として,プレイヤーの予測を裏切る返球を意図的に行うことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,A)対戦相手の行動計測と動作戦略のモデル化,B)エアホッケーロボットにおける対戦プレイヤーの予測能力を考慮した動作戦略の開発,の2つのテーマに絞って研究を行う計画であり,上記で記述した研究実績にあるようにほぼ目標を達しており,十分な研究結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
29年度はほぼ目標通りの研究成果が得られたので,30年度はこれを発展させて研究を進める。具体的には次の研究を行う予定である。 A)対戦相手の行動計測と動作戦略のモデル化:前年度に,デプスセンサと高速ビジョンを統合することで高速姿勢計測を可能とした。今年度は,このシステムを基にエアホッケーで対戦する相手のモーションを計測し,対戦中の行動データのデータベース化を行う。 B)ロボットの動作戦略アルゴリズム:前年度に,対戦相手に応じたロボットの動作戦略アルゴリズムとして,操作者の順応能力や心理的影響を考慮し,リカレントニューラルネットワークを用いて学習する手法を提案した。今年度は,提案手法を改良し,長期的戦略(相手の隙を作る,あえて自分に隙をつくり誘い込む,など)を考慮した動作戦略の姿勢手法を開発する。 C)エンターテイメント性の向上のための動作戦略:ロボット側で人工的な「隙」を作ることでゲームの攻略性を増すことを目指す。「隙」を評価関数として数値化することで,反応速度や反射の精度などについて「隙」を作る手法を提案する。また,現反応速度と動作軌道を変えることにより「人間的」または「生物的」な印象を与えるための動作生成理論について考察する。 D)モバイルエアホッケーロボットの開発:アミューズメントセンター等にあるホッケー台に後付で設置可能なホッケーシステムの開発を目指す。特に,照明や背景の変化,台の大きさの違いなどの環境変化に適応的に対応可能なシステム構成手法について開発する。
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