研究領域 | 認知的インタラクションデザイン学:意思疎通のモデル論的理解と人工物設計への応用 |
研究課題/領域番号 |
17H05866
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
硯川 潤 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究室長 (50571577)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハンドル形電動車椅子 / 安全性 / インタラクション / ライフログ |
研究実績の概要 |
本研究では,シニアカーの走行・操作動態の分析から操作者と車体のインタラクションを体系的に把握することを目的としている. さらにそれを基盤として,操作者が持つ他者モデルに応じて走行制御パラメータを最適化することで,操作意図を的確に反映できる操作アシストシステムの開発を目指す. 今年度は,そのための基礎的な操作動態分析手法の確立を目的として,ジョイスティック形電動車椅子の走行実験データを用いて,操作者のジョイスティック入力の特徴抽出による個人同定を試みた. スラローム走行課題遂行中のジョイスティック入力や動輪角速度などから個人の操作戦略を反映する特徴量を導出し,機械学習により複数の被験者を弁別できるかどうかを検証した. まず,動輪の左右回転数差から前進や旋回などの操作意図を抽出した. その上で,ジョイスティック入力の分布に関連する指標を説明変数として複数個設定し,ランダムフォレストにより個人分類を行った. その結果,ジョイスティック入力の特徴から7割程度の精度で個人を特定できることが分かった. この結果は,電動車椅子操作時の入力特性に,検出可能な個人差が存在することを示唆しており,入力依存的に走行制御を最適化する手法の意義が示唆されたと考える. また,シニアカーの走行制御実験を行うために,ハンドル軸にサーボモータを取り付け左右方向制御を自動化した実験機を開発した. これにより,2自由度の操作入力を電子的に並進速度・ヨー軸角速度に変換してモータを駆動するジョイスティック型と異なり,車体方向が機械軸の手動操作で制御されるシニアカーに,ジョイスティック型と同様の制御介入を実現できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,シニアカーの走行・操作動態の分析から操作者と車体のインタラクションを体系的に把握し,それにもとづき操作意図を的確に反映できる操作アシストシステムを開発するための準備段階として,i) ジョイスティック形電動車椅子の走行実験データを用いた操作者のジョイスティック入力の特徴抽出による個人同定と,ii) ハンドル軸にサーボモータを取り付け左右方向制御を自動化したシニアカー実験機の開発,を行った. それぞれの実施項目について,当初達成すべき水準の成果が得られているため,おおむね順調に研究が進捗していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発した操作入力に制御介入が可能な実験機を用いて,制御アルゴリズムの評価を行い,操作における他者モデルが制御介入でどのように変化するかを検証する. (1) 操作アシストのための最適制御アルゴリズム構築: 他者モデルに走行制御を近づける他者モデル主導型と,走行制御の変更で適切な操作戦略を誘発する他者モデル誘導型の2種類のアルゴリズムを構築する. いずれのモードでも,走行・操作データを統合した時系列特徴ベクトルを走行中にモニタリングし,他者モデルを推定する. 他者モデルと走行制御設定とのずれを検知し,より親和性の高い制御パラメータを設定することで,操作性の向上を実現する (2) 有用性検証とインタラクション変化の同定: 開発したアルゴリズムを実装したシニアカーの走行評価から,操作性の向上と車椅子-操作者間のインタラクション変化を検証する. 特に,他者モデル主導/誘導型それぞれの走行制御調整がもたらす操作戦略変化の差に着目し,開発した操作アシスト技術の利点や適応範囲などをまとめ,制御設計指針として知識化する.
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