公募研究
これまで我々は、PDIファミリー酵素の中でも特にP5が基質に素早くジスルフィド結合を導入することを見出したが、その作用機序は未だ不明であった。P5は酸化還元活性部位を含む2つのチオレドキシン様ドメイン(a0とa)と活性部位を含まない1つのチオレドキシン様ドメイン(b)で構成されているが、全長構造は未だ明らかではなかった。そこでP5全長の構造情報を取得するため、X線小角散乱実験を行った結果、P5は溶液中でa0ドメインを介した二量体を形成し、ドメイン間がフレキシブルなリンカーで結ばれることでダイナミクスに富んだ構造をもつことがわかった。二量体形成の相互作用部位を変異すると、サイズ排除クロマトグラフィーにおいて溶出位置がモノマーの位置にシフトし、SAXS解析からも単量体であることが示された。次に、P5およびP5モノマー変異体によって触媒されるRNase AとBPTIのフォールディング反応を解析した結果、P5とP5モノマー変異体は共に、フォールディング反応初期において素早くジスルフィド結合を導入するが、反応後期においては多くのフォールディング中間体やミスフォールド体を産出した。またルシフェラーゼを用いたシャペロン活性を調べた結果、P5はPDIよりも高い凝集抑制活性を示し、P5モノマー変異体は野生型よりもさらに高い凝集抑制能を示した。今後、生理的意味の解明に取り組む。
2: おおむね順調に進展している
PDIのプロジェクトに関しては、現在論文投稿中である。P5に関しては、全長構造の決定までこぎつけた。P5のプロジェクトにおいても、生理学的な意義の探求により、論文化を目指す。
近年、P5が小胞体ストレス応答の因子IRE1の機能制御に関わっていることが示された。P5二量体構造が機能制御に関わっているか検証する。具体的には、IRE1の多量体をP5が解離するか、P5とIRE1のタンパク質間相互作用などを検証する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
Angewandte Chemie
巻: 56 ページ: p5522~5526
10.1002/anie.201701654.
Structure.
巻: 25 ページ: p846~857
10.1016/j.str.2017.04.001.