研究領域 | 動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する- |
研究課題/領域番号 |
17H05872
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安部 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40508595)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タンパク質結晶 / 多角体 / 細孔空間 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞内結晶工学技術を用い、細胞内で形成されるタンパク質結晶を用いた外来ペプチド、タンパク質の構造解析手法の開発を目的とした。 初年度は、細胞内で形成される多角体内部に、アミノ酸欠損により大きな空間を構築するための分子設計を行なった。多角体結晶内により大きな空間を創出するため、多角体の分子界面に位置する38残基のアミノ酸を欠損した変異体を作成した。昆虫細胞で欠損変異体を20度で発現、結晶化した結果、5日から1週間後に結晶が確認された。SPring-8 BL32XUで細胞のままの結晶構造解析の結果、欠損部位以外は野生型とほとんど構造が変わらないことが明らかとなり、また、集積構造では、ユニットセルの中心に4-5nmの新しい空間があることがわかった。この結晶内空間を利用した分子固定化が期待できる。 作成した多角体タンパク質変異体と外来タンパク質であるSfGFPを細胞内で共発現し、SfGFPの結晶内への固定化を検討した。変異体を用いることで野生型より多くのSfGFPが内包されること、SfGFPの表面電荷が正電荷のほうが負電荷より多く結晶内に固定化されることを明らかにした。また、SfGFPやユビキチンを多角体タンパク質のN末端、C末端に融合した融合タンパク質を作成したところ、ユビキチンを融合した多角体タンパク質は、ユビキチン融合多角体と細胞内でユビキチンが切断された多角体タンパク質の共結晶であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、タンパク質結晶エンジニアリングにより結晶内のアミノ酸側鎖を欠損した変異体の作成と構造解析に成功した。本研究では、アミノ酸の欠損により形成された内部空間へのタンパク質やペプチドの固定化による構造解析手法の開発であり、本年度作成した変異体は、野生型では固定化できなかったタンパク質の固定化を可能にした。さらに、変異体の結晶構造も明らかにしており、タンパク質やペプチドの固定化による外来タンパク質の構造解析の可能性を示した。したがって、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より多角体の結晶化に関与しない領域を欠損しても多角体は細胞内で合成することがわかった。したがって、本年度欠損した38残基以外にも別のループ領域やアミノ酸領域を欠損することにより、様々な空間を形成する結晶を構築することができる。今後は、その空間へ外来タンパク質やペプチドを融合することによる構造解析を試みる。具体的には、多角体結晶の欠損部位に金属結合ペプチドなどの外来ペプチドを導入し、細胞内結晶化ならびに構造解析を試みる。
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