研究領域 | 動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する- |
研究課題/領域番号 |
17H05876
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
清水 啓史 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (50324158)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 1分子計測 / X線回折 / 蛋白質 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
X 線1 分子動態計測法はサブミリ秒時間分解能で蛋白質1 分子の分子揺らぎと構造変化を動画として捉える事ができる。この方法を蛋白質1分子構造変化を定量的に評価できる汎用計測法として確立することを目的とした。本手法は、計測目的の生体分子1 分子の特定部位に標識した金ナノ結晶の運動を結晶面からの回折点の運動として動画計測し、~0.1 度程度の高空間分解能で生体分子の動きを計測できる。サイズ制御した観測プローブの開発、および低ノイズ観測チャンバー開発によって定量性・汎用性のある動態計測法として確立することを目指し下記の成果を得た。 (1)サイズ制御した金ナノ結晶の作製:ナノ結晶の作製には基板上に薄膜を形成し、薄膜をパターンニングする方法を採用した。基板材料、薄膜の形成法によって結晶性が異なるため、作製法ごとに放射光施設で評価した。(2)低ノイズ溶液置換観測チャンバーの開発:昨年度決定したノイズの小さい素材を用いて流路を形成した。また溶液置換用のジグを作製し、送液方法を検討した。実験のプロセスは連携研究者である平井義和助教(京都大学)、研究協力者である田畑修教授(京都大学)の協力を得て行った。(3)SPring8 での実験:1.2.で作成した観測プローブ、低ノイズ観測チャンバーを大型放射光施設(SPring8)で利用し、X線の散乱特性を計測し、作製プロセスへのフィードバックを行って1.2.の作成プロセスの再検討し精密化を行った。実験は連携研究者である岩本真幸助教(福井大学)の協力を得て行った。 また領域内共同研究(九工大 安永卓夫教授)でイオンチャネル蛋白質の単粒子構造解析を行った。 本研究の成果は、日本生物物理学会、日本生理学会、第34回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム、Pacific Rim Nano Medicine Symposium 2018で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金ナノ結晶のサイズ制御システム、およびその評価システムが確立しており、作製条件検討が順調に推移している。また、溶液置換観測チャンバー開発は、低散乱ノイズを実現するチャンバーデザイン・作製方法の検討が順調に進んでいる。領域内共同研究でイオンチャネル蛋白質の単粒子構造解析に着手し順調にデータを蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はサイズ制御した金ナノ結晶を用いて1分子動態計測を行い、サイズ制御法の評価を行うとともに、結晶サイズとダイナミクスの相関についての動態計測データを得る。また、観測中に溶液置換によって溶液条件を変化させる運動応答計測を試みる。また、単粒子構造解析を進め、これらの動態計測結果と立体構造の対応関係についての知見を得ることを目指す。
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