研究領域 | 動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する- |
研究課題/領域番号 |
17H05884
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
菅 倫寛 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (60634920)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光合成 / X線自由電子レーザー / 膜タンパク質 / 構造ダイナミクス |
研究実績の概要 |
本研究では光化学系IIなどを対象として、巨大な光合成膜タンパク質複合体の光による励起後の構造変化をフェムト秒時間分解能で明らかにすることを目指している。光化学系IIは光駆動の水分子の酸化と酸素分子の発生を担う、分子量70万の巨大な膜タンパク質複合体である。研究代表者らは水分解・酸素発生の反応機構における原子基盤を明らかにすることを目的としてX線自由電子レーザーを用いた構造解析を行ってきた。これまでに反応開始状態に相当するS1状態および反応中間体に相当するS3状態を構造解析することに成功したので、この研究基盤を用いて光励起後の構造変化を捉えることを試みた。H29年度は培養装置を大型化して、これまでの2点から4点の多点測定が可能な量の結晶サンプルを供給できる大量培養と精製のシステムを確立させた。得られたサンプルを用いてサイズが100um程度の非凍結の小さな結晶へ室温にて閃光を二発照射して、一定の遅延時間の後にX線自由電子レーザーを照射して回折データを収集した。これによりS2状態からS3状態への構造変化が経時的に観測できることが期待できる。得られた回折データを分析したところ、論文発表した構造解析に比べ結晶の回折分解能が悪く詳細な構造変化を追うことはできなかったが、基質水分子が挿入されるタイミングなどがわかってきた。引き続き精製スケールの大型化と回折データの改善を行って詳細な構造解析を行い、論文発表することを予定している。また他の光合成膜タンパク質にもこの手法を適用して構造解析を行うことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養スケールを倍にして4点までの異なる状態について構造解析できる実験システムを立ち上げ、これらの構造解析に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
閃光による励起後の結晶に遅延時間を与えてX線自由電子レーザーを照射して構造解析することによりフェムト秒時間分解能で構造変化のタイミングを明らかにすることができるようになってきたので、現在の解析結果から興味深い構造変化が起こるタイミングを明らかにする。引き続き精製スケールの大型化を行い、構造変化を見たいタイミングで多点のデータ測定を行い詳細な構造解析を行う。また他の光合成膜タンパク質にもこの手法を適用して構造解析を行うことを予定している。
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