マルチドメインタンパク質は、しばしば各ドメインが柔軟なリンカーで繋がった構造でフレキシブルであるため、結晶化が容易でなく、X線結晶構造解析が適用できないことも多い。そこで溶液状態で構造解析が可能なNMRを主に用いて、動的な状態も含めた構造解析を行うことを目的に以下の研究、1と2を進めた。 1. ドメイン間の距離情報を取得するため、常磁性効果を用いたNMR解析が必要である。そこでRNA結合タンパク質Nrd1の安定同位体ラベルしたRRM1-2ドメインと、スピンラベルを導入する部分であるRRM3-4ドメインを連結させた。現在までに高活性型のsortaseを用いた反応で約30%程度の収率で連結した生成物を得ることに成功した。スピンラベルについては、常磁性金属を配位させたDOTA-M8を導入した試料の調製に成功した。 2. さらに1000残基以上の巨大なタンパク質であるvinclulinについて、Nrd1同様に、各ドメインに分割してドメイン選択的にラベルした後、それぞれを連結するアプローチを試みた。これにより、巨大タンパク質でも、より容易に動的構造情報が得る手法の確立を目指した。現在までにvincuinタンパク質をそのN端領域である約750残基の部分と、C末端領域の約250残基の重水素化体の調製を行い、それぞれNMR測定に成功した。さらに、これらvinculinの分割された部分どうしを高活性型のsortaseを用いて、低温条件下で連結することに成功し、連結前と連結後ではNMRスペクトルに変化が起こることの確認にも成功した。
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