公募研究
平成29年度当初は2つのサブユニットのみで構成される古細菌由来のプロテアソームを対象として研究を進めた。その結果、古細菌のプロテアソームとアッセンブリーシャペロンのホモログが結合した状態を高速AFM解析と溶液散乱を用いて捉えることに成功した。こうした研究を通じて、真核生物のプロテアソームのアッセンブリー中間体を解析するための基盤技術を整えることができた。真核生物のプロテアソームに関しては、大腸菌発現系を用いて、7種類のαサブユニットおよびアッセンブリーシャペロンをリコンビナントタンパク質として調製することに成功した。これらタンパク質を超分子質量分析に供したところ、14量体構造を示すα7以外のαサブユニットは単量体と2量体の平衡状態で存在することを明らかにした。リコンビナントタンパク質として調製した各αサブユニットとアッセンブリーシャペロン(PAC1-2およびPAC3-4)を試験管内で混ぜ合わせた結果、PAC1-2がα1およびα2と結合した複合体、PAC3-4がα5と結合した複合体がアッセンブリー中間体として存在することを見出した。また、混合試料をゲル濾過カラムで分離した高分子量の分画に、α7とα6が7:1で含まれるヘテロオクタマーが形成されていることも見出した。このヘテロ8量体の形成過程に関しては、高速AFM解析によってα7ホモ14量体とα6による形成過程の可視化を試みた。その結果、2重リング構造を形成しているα7の14量体に対して単量体のα6が相互作用することで、2重リング構造が開裂し、α7の1重リング構造の中心にα6が結合するという中間体形成プロセスを明らかにすることに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
大腸菌発現系を用いて、7種類のαサブユニットおよびアッセンブリーシャペロンをリコンビナントタンパク質と調製することが可能となったため、プロテアソームのアッセンブリー中間体を取れることに成功している。一部のアッセンブリー中間体に関しては、高速AFM解析によってその形成過程を捉えることに成功した。こうした結果は、2017年の11月に論文公表している [Kozai et al. Scientific Reportsvolume 7, Article number: 15373 (2017)]。以上の成果を総合的に判断して順調に研究は進展しているものと判断している。
前年度に引き続き、同定したアッセンブリー中間体は、超分子質量分析により複合体中の構成サブユニットの化学量論を明らかにする。古細菌由来のプロテアソーム複合体を対象として行った溶液散乱や高速AFMなど解析から蓄積することのできた各計測手法の基盤技術を真核生物のプロテアソーム中間体のキャラクタライズへ応用する。前年度までに明らかになっているアッセンブリー中間体に関しては、構成コンポーネントを組換えタンパク質として大量発現し、試験管内再構築をすることにより、その3次元構造情報を得ることを試みる。また本研究で見出される形成中間体は、動的であり構造的に不均一である可能性が高いため、高速AFMで複合体を測定する。さらにはこうした複合体に関して、構成するサブユニットを順次加えて行くことで、高速AFMによって複合体の形成過程を活写することを試みる。一方で、安定性の高い中間体においては、量子ビーム散乱も利用して、構造のキャラクタライズを行うことも計画している。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
Protein Engineering, Design and Selection
巻: 31(1) ページ: 29-36
10.1093/protein/gzx066
Scientific Reports
巻: 7(1) ページ: art. no. 15373
10.1038/s41598-017-15708-8