公募研究
病原性バクテリア由来のヘムトランスポーターはATPを駆動力とするが、トランスポーターのヌクレオチド結合サブユニットへのATP結合や加水分解反応がトランスポーターの膜貫通領域や全体構造の動きとどのように共役しているのかという基本的な現象の作動原理については未だに不明な点が多い。本研究課題では、ヘムトランスポーターの作動機構を詳細に解明するために、反応軸に沿った分光法とX線構造解析を組み合わせた動的構造解析を試みている。ATPの結合からスタートしてその後の時間軸にそった立体構造の変化の経路や過渡的な基質認識のメカニズムを明らかにするためには、結晶試料からの各種スペクトルとX線回折データが必要となる。平成29年度は、分光装置の開発と測定試料の調製を中心に進めてきた。予備実験としてヌクレオチドがヘムトランスポーターのATPaseサブユニットに結合した際の赤外吸収スペクトルの変化を測定した。実験では全反射型赤外分光装置を用いた。光反応性のケージドATP化合物の利用と時間分解X線回折実験を想定した実験として、結晶内での反応励起効率および反応分子の比率を上げるための微結晶の作製および微結晶に対応する可視光分光装置の整備を行った。また、開発した分光装置や励起用レーザーのシステムの性能を評価するために、ケージド化合物を用いたモデル系としてヘムタンパク質の時間分解結晶構造解析測定を行った。本研究で得られた知見は学会および論文等で公表を行った。
2: おおむね順調に進展している
トランスポーターへの応用はやや遅れているが、開発した分光装置を利用して、まずはモデル系としてケージド化合物をヘムタンパク質の時間分解結晶構造解析測定に応用することに成功した。すでに得られている結晶構造を基盤にして連携研究者が進めている分子動力学計算も順調に進んでいる。
ケージドATPを利用したトランスポーターの動的構造を追跡する手段として確立するために、X線結晶解析のための微結晶の調製方法の最適化や、レーザー励起システムと赤外分光装置の整備を行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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