研究領域 | 動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する- |
研究課題/領域番号 |
17H05897
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
重松 秀樹 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 研究員 (00415928)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クライオ電子顕微鏡 / 生物物理 / 動的構造解析 / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
膜蛋白質として、イオン透過型グルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体について、電子顕微鏡解析用のGluA2emの発現・精製を行った。界面活性剤可溶化状態での精製については電子顕微鏡による確認を行い、脂質ナノディスクへの再構成を検討したが、現在までのところ良好な結果は得られていない。これはAFMでの解析について、脂質二分子膜再構成系の成功例が少なく、国内での成功事例を踏まえてナノディスクの利用に系を変更しようと計画したためである。また、先行研究により、GluA2の4量体からなるAMPA受容体については、その制御サブユニットであるGSG1Lを融合蛋白質として発現し、ナノディスクに再構成することが可能であることが分かったため、今後は、GSG1LおよびStargazinとの融合蛋白質の作製、ナノディスクへの再構成を行う。 方法論開発として先行して行っていた電依存性カリウムチャネルKv1.2を脂質小胞に再構成した系では、分解能を向上させるべくより高性能な電子顕微鏡の利用を検討し、米国Yale大学の電子顕微鏡の利用を開始したが、これまでに分解能の向上は得られていない。現在は問題点の洗い出しのための検討を行っているところである。分解能向上を図る上での懸念材料として、炭素薄膜からのノイズがあり、それを避けるために炭素数層からなるグラフェンを支持膜として用いる系に移行する予定である。29年度末あたりから、より簡便で再現性の高いグラフェン支持膜貼付グリッドの作製方法が発表されており、これを用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
界面活性剤可溶化状態から脂質環境へと再構成したうえで、高速原子間力顕微鏡、クライオ電子顕微鏡による動的構造の活写を目指していた。しかしながら、測定方法から来る技術的困難のため、脂質環境を脂質小胞から脂質ナノディスクへと変更する必要があり、こちらでの条件検討に時間がかかっている。また、脱感作状態の動的構造を活写るには、その構造アンサンブルがより少ない方が、分子動力学シミュレーションによる計算時間を少なくすることが出来るため、先行研究でナノディスクへの再構成が成功している、制御サブユニット融合蛋白質へと系の変更を計画することにしている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である30年度では、試料調製からの見直しをすることで、結果として構造データの取得を加速することを目指している。脂質環境として、脂質ナノディスクを用いる系は、高速原子間力顕微鏡およびクライオ電子顕微鏡単粒子解析の両方での実績があり、国内での成功例もあるため、技術的な問題については国内の研究者への聞き取りも含めて解決を図ることが出来る。また、新しく調製する制御サブユニット融合蛋白質を用いることで、動的構造を反映した構造アンサンブルのバリエーションを減少させることが期待され、分子動力学シミュレーションによる計算時間の要求を緩和することが可能となり、全体として研究の加速が期待出来ると考えている。
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