研究領域 | 動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する- |
研究課題/領域番号 |
17H05898
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
広瀬 恵子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90357872)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子モーター / 鞭毛・繊毛 / 運動計測 / 微小管 / DNA折り紙 / 電子顕微鏡 / 生物物理 |
研究実績の概要 |
鞭毛・繊毛の振動的な屈曲運動は、軸糸内に配列したダイニン分子の運動が何らかのしくみで制御されることによって起こる。本研究では、軸糸外腕ダイニン、微小管、架橋構造から成し、振動的な運動を起こすようなモデル系を作成し、その運動を観察するとともに、運動中のダイニンの構造を電子顕微鏡で解析することを目指している。 本年度はまず、軸糸外腕ダイニン分子をクラミドモナス鞭毛から抽出し、ATPを加えた時の微小管運動活性をin vitro motility assay によって確認した。次にこれらのダイニン分子を微小管に結合させて複合体を作成し、二本の微小管の間にダイニンが一列に規則的に並ぶような条件を検討した。作成したダイニン微小管複合体にATPを加え、蛍光顕微鏡で運動を観察した。ATP添加後、短時間で微小管の滑り出しが起こり、複合体の解離が起こるので、caged ATPを用いることによって複合体からの微小管の滑り出し運動を確認することができた。 続いて、この複合体の微小管同士を架橋する構造として、長さ80 nm程度の棒状のDNA折り紙構造体を作成し、変異体キネシンを介して微小管に結合させた。現段階では、低濃度のダイニンを用い、複合体あたりのダイニン分子の数が少ない時には、DNA折り紙架橋によって複合体の解離を抑制することができた。微小なビーズを微小管に結合させ、光ピンセット法を用いることによって、架橋された複合体中の微小管の運動を観察することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイニン・微小管複合体からの微小管の滑り出し運動を観察するのが予想以上に困難で時間を費やしたが、鞭毛ダイニンの精製や、in vitro 運動測定の条件検討を重ねることにより、高い確率で運動の観察ができるようになった。また、複合体の運動のナノ計測の条件も検討し、架橋された複合体の微小な運動の観察が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
より高濃度のダイニンの存在下でも複合体の解離が抑制できるように、架橋に用いるDNA折り紙構造体と微小管の結合の改良を試みる。架橋した複合体の運動をナノ計測で詳細に解析する。また、運動中の複合体を急速凍結してダイニンの微細構造を観察する。
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