研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
17H05905
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
島 圭介 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50649754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機能的電気刺激 / パターン認識 / 関節運動リハビリテーション / 筋電位 / 脳機能解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,申請者が考案した多チャネル筋電位による動作推定と電気刺激型筋収縮制御による関節運動相互伝達リハビリテーション法を拡張し,運動に伴う関節インピーダンス状態を療法士-患者間で相互伝達する方法論を確立することで,提案法の適用によって身体・脳機能に及ぼす効果を明らかにすることである. 本年度は,電気刺激を用いて適切な筋収縮と関節インピーダンスの伝達が可能な方法論の構築を実施した.申請者はこれまでに,患者の筋電位からニューラルネットを用いて動作を推定し,複数の小型振動子および電気刺激装置を用いて適切な筋収縮情報を体性感覚刺激として伝達する方法論を考案した.本年度ではこれを発展させ,関節運動にともなう関節インピーダンスの状態を多チャネル筋電位およびによって推定し,推定したインピーダンスパラメータを電気刺激によって再現する事に成功した.関節インピーダンスは目的とする関節の屈筋と伸筋の収縮のバランスによって決定され,人間は様々なタスクにおいて巧みに関節インピーダンスを調整していることが知られている(辻ら, 1998 など).そこで,まず療法士の運動にともなう適切な関節インピーダンスを筋電位のパターンから計測・推定する.さらに,患者に貼付した多チャネル刺激電極に対し,関節の屈筋と伸筋に電気刺激パターンを与えて関節運動と関節インピーダンスを伝達する.この際の患者の関節インピーダンスを同様に計測することで,関節のかたさ・やわらかさを適切に伝達可能とした.また,脳波信号から被験者の動作意図を推定し,電気刺激や振動刺激などの様々な刺激をフィードバックすることで運動想起能力を訓練する方法論を考案し,有効性を示した.さらに,被験者の動作意図を時系列生体信号パターンから高精度に推定する新しいパターン識別法を考案し,有効性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに,既にヒトからヒトへ関節インピーダンスを相互伝達する方法論の確立に成功しており,実証実験を進めている段階である.また,脳科学研究者との共同研究を推し進め,提案法の脳機能に与える影響評価の準備を進めており,次年度には実現できる見込みである.さらに,身体機能評価については理学療法士の共同研究者らと継続的に効果の検証を進めており,近日中に実患者への適用によって有効性を示すことも期待されている.このことから,総合的に当初計画よりも順調に進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記2つの課題について継続的に取り組む. [1]筋協調制御伝達訓練が身体・脳機能に及ぼす影響の解析:電気刺激によって促進された筋収縮状態と各種センサで計測する関節運動情報,および訓練前後・訓練時の脳活動を解析・評価し,臨床的知見に基づいて提案訓練法の有効性検証を行う.具体的には,fMRI および脳波計を用いて関節運動時の脳活動を計測し,療法士によって実施する他動訓練と提案法(動作推定+電気刺激)による脳活動の変化や,電気刺激による脳賦活の解析と運動学習効果の検証などを実施し,提案法が脳内構造の変容に与える影響を評価する. [2]感覚刺激の知覚特性のモデル化:申請者はこれまでに,小型振動子を用いて人間の上肢の触覚特性がFechner の法則に従うことを明らかにし,任意の空間・時間情報を振動を用いて被験者に知覚させる方法論を考案した(島ら,2012).ただし,振動刺激のみでは筋収縮部位やタイミングを意識させることはできても,無意識下に筋収縮を促すことはできない.また運動中の知覚特性は明らかになっていない.そこで被験者に電気刺激用の電極を複数取り付け,刺激に対する筋収縮量を筋音図で計測するとともに,被験者の筋収縮知覚特性をマグニチュード推定法によってモデル化する.電気刺激の振幅(刺激量I)として伝達するとしたとき,知覚する筋収縮の大きさ(知覚量E) は刺激閾I0 を最小値とするモデルを構築する.
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