公募研究
腹側前頭・頭頂葉ネットワークにおいて左半球では高次運動、右半球では身体意識に関する皮質活動探索と変容様式の同定を進めた。左半球は術前評価に硬膜下電極を留置し、研究に同意を得た難治部分てんかん患者において陰性運動野に対し、課題に同期した電気刺激で介入し運動制御の変容(fast dynamics)の定量解析をモーションキャプチャーシステムを用いて進めた(国内学会発表)。道具使用・模倣中の広域周波数帯域の神経活動計測の症例を蓄積し、decodingを試み、行為関連領域内内の機能分担解明を推進した。SLFを含む前頭葉・側頭/頭頂葉のネットワークの機能結合性の左右差を皮質皮質間誘発電位(CCEP)を用い評価し言語優位側の機能結合特異性を報告した(論文改訂中)。前頭葉内ネットワークのFrontal aslant tract (FAT)をCCEPにて解析し言語・運動に関わる機能結合性を報告した(論文発表)。背側の頭頂葉・前頭葉の皮質間結合について内側外側での結合性の異同を明らかにした(国際学会発表)。右半球の身体意識・自己認識に関わる脳内表現マーカーの同定を推進した。右半球頭蓋内電極留置の患者において顔の自他識別課題下の脳活動計測を行った。今後decodingにより自他判断(自己意識)の機能局在を解明する。右頭頂葉・島皮質病変の患者で手術前後に運動主体感を定量的に計測しfast~slow dynamicsへの変容を検討した(国内学会発表)。頭蓋内電極留置例で運動主体感計測課題下の皮質律動活動を記録し、律動活動のdecoding解析に着手した。安静時機能的MRI によるネットワーク解析を術前後に縦断的に施行し、ネットワークの動的遷移と機能可塑性による代償機転の解明を試みる。臨床的には身体表現脳律動マーカーを応用したニューロフィードバック型リハビリ治療の開発へ貢献を目指す。
2: おおむね順調に進展している
具体的に下記が成果として挙げられる。A) 左前頭葉・頭頂葉の機能同定、fast dynamicsによる変容の解明:道具使用・巧緻運動に関わる左前頭・頭頂ネットワークについて、症例を蓄積し、高頻度皮質刺激研究により運動の遅延、制御の変容(fast dynamics)の定量解析を推し進めることができた(国内学会発表)。また道具使用・ジェスチャー模倣中の広域周波数帯域の神経活動計測も症例を蓄積し、導入したワークステーションにより脳波信号解析およびデコーディング解析に着手できた。B) 前頭葉・頭頂葉ネットワーク機能結合地図作成:前頭葉・側頭/頭頂葉のネットワークの半球間の比較から、言語優位半球の特異的な機能結合性について論文作成した(改訂中)。前頭葉内の言語・運動に関わるネッとワークをCCEPと解剖的線維追跡法を統合して明らかにし論文発表した。背側前頭・頭頂葉の皮質間結合についてもCCEPにより同定しえた(国際学会発表)。C) 身体・自己認識にかかわる右前頭葉・頭頂葉ネットワークの解明:右頭頂葉・島皮質に病変がある症例を蓄積し、手術前後の運動主体感を定量的に計測し、術後の運動主体感の変容(代償機転)を急性期(fast dynamics)から亜急性期(slow dynamics)への遷移に焦点をあてて検討した(国内学会発表)。右半球に頭蓋内電極を留置した2症例で、運動主体感計測課題施行時の皮質脳波活動を右島から記録し、運動主体感関連の脳律動のdecoding解析に着手した。顔の自他識別課題についても、脳活動計測を開始、症例蓄積できた。デコーディングによる右SLF IIIネットワーク内の自己意識(自他判断)の機能局在の解明に着手した。
本年度は、ヒトの腹側前頭葉・頭頂葉ネットワーク(SLF IIIネットワーク)において、左優位半球では、道具使用・巧緻運動に関わる脳律動計測および刺激介入による変容(fast dynamics)を明らかにし、右半球では、身体表現・自己認識に関わる脳律動計測、病変研究によるfastからslow dynamicsへの遷移を明らかにした。次年度は、課題下および自然な行為中の道具使用・到達運動・巧緻運動(左半球)と身体所有感・自己意識(右半球)に関わる皮質脳波を記録し、時間周波数解析から関連する広周波数帯域(超低周波~高ガンマ帯域)の脳律動を探索、さらに症例蓄積し、すでに着手している脳律動のデコーディング解析を進める。脳律動のデコーディングで得られた重み付け情報と皮質間結合様式から、腹側前頭・頭頂葉ネットワーク内のハブ領域や機能分担を明らかにし、脳内身体表現の脳律動マーカー候補を同定する。各種脳活動が計測された皮質領野へ単発皮質電気刺激から記録されるCCEPの分布から、関連皮質領野間の皮質間結合様式を探索し、引き続き症例蓄積を行う。右半球の脳内身体表現関連領域の病変を有し手術予定の患者を対象に、運動主体感の定量的評価(行動解析・精神物理)と安静時機能的MRI解析(機能的結合)を術前後で経時的に施行しており、引き続き症例蓄積を行う。運動主体感は正常推定モデルを作成、正常~異常への遷移を定量的に解析する。障害の責任病変を同定し、同時に機能変容のfastからslow dynamicsへの遷移(代償)の機構の解明を推進する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 10件、 招待講演 11件) 図書 (5件) 備考 (2件)
神経心理学
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