公募研究
H30年度は,脳卒中片麻痺患者を対象とした臨床研究を継続した(H29年度からの継続)。介入方法には,我々が開発した視覚誘導性自己運動錯覚(KINVIS)を誘導するシステムであるKiNvis(TM)を使用し,KINVISと神経筋電気刺激法を組み合わせる療法(KiNvis療法)を実施した。その臨床試験において,脳機能結合(A)と治療の有効性(B)に関するデータを得た。年度内に,手指の随意的な伸展が困難な重度運動麻痺脳卒中患者のべ64名に対する臨床研究を終了した。そのうちここでは,シングルアームのKiNvis療法介入群で解析が終了した11名について報告する。A. 脳機能結合の変化:機能的磁気共鳴画像法により安静時脳機能結合を解析し,脳機能変化の指標とした。撮像方法はH29年度の健常者における計測と同様である。今年度対象とした患者群では,左右半球に10ヶ所ずつ設定した関心領域と全脳ボクセルとの相関部位を探索した。介入前は両側島皮質間や両側頭頂葉皮質間の一部を除き有意に相関する部位は検出されなかった。介入後は,非損傷半球背側運動前野と有意に相関する部位として同側の上頭頂小葉および一次運動野が検出された。また,損傷半球補足運動野と同側の一次運動野間が有意に相関していた。B. 運動機能の変化:臨床上一般に使われている評価指標を用いて,KiNvis療法前後における運動機能の変化を検査した。介入後に上肢運動機能は有意に改善し,中等度の効果量を示した。また,痙縮を示す臨床スコアが改善した。今回の患者群の運動機能レベルは,諸家らの治療効果に関する報告よりも重度であった。以上,本研究では,脳卒中後の重度運動麻痺患者に対するKiNvis療法の反復で運動機能が改善し,脳機能変化が伴っている可能性が示された。今後,対照をおいたさらに質の高い臨床研究を実施する価値があるものと考える。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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バイオメカニズム
巻: 43 ページ: 29-34
Clinical Neuroscience
巻: 36 ページ: 49-57
巻: 24 ページ: 49-57