研究領域 | 脳・生活・人生の統合的理解にもとづく思春期からの主体価値発展学 |
研究課題/領域番号 |
17H05924
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 雄介 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20615471)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 価値観 / 二次データ / PISA / 学力 / 健康 / 発達 |
研究実績の概要 |
質問紙を用いた多くの調査データは自己記入式の回答に基づく場合がほとんどであるが,それには各尺度項目に対する回答者各自の反応傾向が色濃く反映される。思春期を含む比較的低年齢層を対象とした自記式回答データでは問題は更に大きくなり,調査データの信頼性は低い傾向にある。言わずもがな,信頼性の低いデータからは分析結果に関する適切な推論も困難となる。そこで,自記式の調査データには反応傾向というバイアスが含まれてしまうことは織り込み済みのものとし,それらを統計モデルを用いて補正することによって,より適切な解釈に導くことが必要である。その回答バイアスの補正方法として,近年もっとも有力視されているのが係留寸描法を用いた方法である。この方法を用いたバイアス補正は,バイアス含みの自己評定を行ったのちに,関心下の行動特性について複数の仮想的な人物に関して描写された情報も併せて読んでもらい,それらの人物について評定も得たうえで,その情報をその前で得ている自己回答のバイアス補正に活用するものである。そもそもは政治学分野で開拓されたが,近年は健康科学,心理学においても活用され始めている。高橋(2017)では,OECD PISA 2012調査で用いられた係留寸描項目を対象に分析を行い,統計的に適切な補正後,思春期の子どもたちの回答する学級や教員に対するポジティブな評価は学業達成とより正に相関するようになること,そしてそれらの評価は子どもたちのパーソナリティ特性と有意な関連性が消失することを報告した。また,Okada, Hojo, & Takahashi (2017)では,2時点の縦断調査データの分析結果を報告し,思春期の子どもたち個人のパーソナリティ特性尺度に対する回答傾向には経時的な安定性が見受けられると同時にかなりの個人差が存在することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標は,オープン・データを取得したうえで,思春期・青年期期における価値観の発達の様子を複数の観点から明らかにし,統計学的により適切なモデリングを用いてそれらの集団差と個人差を同時に描き出すことであるが,本年度はそれらの目標に照らして十分な研究報告を行うことが出来たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現状において,本研究計画に関する後ろ向きな計画変更の予定は無い。昨年度から引き続いて,よりインパクトの高い研究誌への論文採録を目指す。
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