研究実績の概要 |
東京都内3自治体で行っている大規模思春期コホート研究の参加児童を対象とした。同コホートでは、10歳児童を対象に初回調査を、その2年後に12歳時点での追跡調査を行い、94%超の高い追跡率を維持している。今回、12歳時調査で採取した早朝尿検体より、EIA法で尿中インターロイキン-6濃度を測定した。また、同じ尿検体より、酵素法で尿中クレアチニン濃度を測定した。アパシーの指標として、SDQ(Strength and Difficulty Questionnaire)とPLOCQ(Perceived Locus of Causality Questionnaire)を用いた。SDQとPLOCQの下位項目を従属変数、尿中インターロイキン-6濃度(クレアチニン補正)を独立変数とした回帰分析を施行した。 12歳時調査に参加した1640名から尿検体を回収した。そのうち、尿中インターロイキン-6濃度が測定限界値を超えた735名を解析対象とした。回帰分析の結果、尿中インターロイキン-6濃度は、感情や行動の問題などとは有意な関係を示さなかった。一方で、尿中インターロイキン-6濃度と向社会的行動の間には、有意な負の関係がみられた(β= -0.078, p=0.042)。さらに、尿中インターロイキン-6濃度と内発的動機づけの間には、有意な負の関係がみられた(β= -0.091, p=0.016)。これらの関係は、性別、月齢、BMIなどを調整しても有意だった。 尿中インターロイキン-6濃度は向社会的行動や内発的動機づけなどの積極的なpositive behaviourと負の関係を示した。一方で、インターロイキン-6と感情や行動の問題(積極的なnegative behaviour )との間に有意な関係はなかった。このことは、尿中インターロイキン-6濃度がアパシーと関係する可能性を示唆する。
|