本研究では、機能的磁気共鳴・脳イメージング実験(Functional Magnetic Resonance Imaging experiment)を用いて「食品画像を見ている際の脳活動から食べ物の嗜好や体重、各種精神疾患傾向(例:肥満/摂食障害傾向)などを予測する手法」の開発を目指す。 二年の研究期間中に約120人の被験者を対象に実験を行った。実験は二日間に渡り行われた。まず、一日目に被験者は食べ物の好みや体重、各種精神疾患(摂食障害、抑うつ、不安症、強迫性障害など)に関するアンケートに答えた。次に二日目に、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置の中で脳活動を計測されながら様々な食べ物の画像を見た。なお、全ての被験者から書面で実験参加への同意を得ている。また、上記の実験手順は全て東北大学医学系研究科倫理委員会の承認を受けている。 脳イメージング・データとアンケート・データを解析した結果、以下のことが明らかになった。 ・食べ物の好みは脳の前頭前野内側部(medial prefrontal cortex)で処理されている。この結果は先行研究と整合的であり、今回の実験パラダイムの妥当性を担保するものである。 ・被験者の食べ物の好みの個人差は脳の前頭前野背外側部(dorsolateral prefrontal cortex)の活動から予測される。 これらの結果は、ヒトを含む動物の生存に不可欠な役割を果たす「食べる」という営みの個人差(個性)の背後にある神経メカニズムを明らかにするための一歩になり得る。
|