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2017 年度 実績報告書

「個性」はどのように変化するか?

公募研究

研究領域多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解
研究課題/領域番号 17H05937
研究機関群馬大学

研究代表者

金子 涼輔  群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40390695)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードプロトカドヘリン / ノックインマウス / ゲノム編集 / 遺伝子発現制御
研究実績の概要

仮説「Pcdh発現の変動が個性を変える」検証のため以下3課題を行った。
a)Pcdh発現変動の測定:発生過程におけるPcdh発現変動を解析した。その結果、Pcdhサブファミリーごとに異なる発現変動であることが判明した。ついで、Pcdh-β3発現可視化マウス(β3-RFPマウス)を用いて、細胞種ごとのPcdh発現変動を測定した。その結果、細胞種ごとに発現変動パターンが異なることが判明した。すなわち、海馬CA1では生後1週齢の4%をピークに4週齢以降は1%以下に激減するが、海馬歯状回では生後1週齢以降は常に4~5%と高値であった。すなわち、細胞種ごとに異なる発現制御メカニズムの存在が示唆された。また、Pcdh-β3以外のPcdhも可視化するためのマウス作りを進めている。Pcdhg発現を可視化できるマウスが完成した。
b) Pcdh発現と神経結合との相関解析:Pcdh分子機能を解析するため、結合シナプスの前後に同一Pcdhが存在するかを調べる。そのため、完成したPcdhg可視化マウスを用いた組織学的解析の準備を進めた。
c) Pcdh発現の変動メカニズム解析
Pcdh発現制御メカニズムを解明する。Pcdhb3発現可視化マウスを用いて、Pcdh-β3プロモーターDNA配列へ結合するタンパク質やDNA領域を同定する。以下3ステップである。C-1) RFP陽性細胞(=Pcdh-β3発現細胞)の単離、c-2) Pcdh-β3プロモーターのエピゲノム解析、c-3) Pcdh-β3プロモーター近傍のクロマチン状態解析。本年度はc-1の条件が確立できた。さらに、Pcdh-β3発現細胞のエピゲノム状態を解析した。その結果、Pcdh-β3プロモーターにおけるDNAメチル化率が低いことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

私たちは、個々のニューロンごとに異なるプロトカドヘリン(Pcdh-α、-β、-γ。シナプス形成に関わる、約50種の細胞接着分子群)がランダムに発現することを発表した。Pcdhは音楽的才能やタバコ嗜好性、自閉症への関与が報告されており、「個性」創発に関わると考えられる。我々は最近、Pcdh発現が①個体ごとに異なり、②経時的に変動することを見出した。
本研究では仮説「Pcdh発現の変動が個性を変える」を検証する。本研究期間には以下3課題を実施する。a)Pcdh発現変動の測定、b)Pcdh発現と神経結合との相関解析、c)Pcdh発現の変動メカニズム解析
これまでに、以下の成果を得た。(a-1)発現変動パターンはPcdhサブファミリーごとに異なることを見いだした。(a-2)Pcdh発現変動パターンは細胞種ごとに異なることが判明した。(a-3) Pcdhg発現を可視化できるマウスが完成した。(b-1)成果(a-3)で得られたPcdhg発現可視化マウスを用いて結合シナプスの前後に同一のPcdhが存在するかを調べるための準備と予備実験が進んだ。課題cではPcdh発現制御メカニズムを解明する。このためPcdhb3発現可視化マウスを用いて、Pcdh-β3プロモーターDNA配列へ結合するタンパク質やDNA領域を同定する。(c-1)Pcdh-β3発現細胞を単離する条件を見つけた。(c-2) Pcdh-β3発現細胞ではPcdh-β3プロモーターのDNAメチル化の低下が示唆された。

今後の研究の推進方策

今後は、2017年度に得られた結果を足がかりとして研究を大きく推進させる。そのため、以下3課題を実施する。a)Pcdh発現変動の測定、b)Pcdh発現と神経結合との相関解析、c)Pcdh発現の変動メカニズム解析
課題a)Pcdh発現変動の測定:細胞種ごとのPcdh発現変動パターンの解析を進める。すなわち、海馬の興奮性ニューロン以外の細胞種について解析する。抑制性ニューロンやモノアミン系ニューロンでの解析を予定している。また、Pcdhb3以外のPcdhアイソフォームの発現可視化マウス作製を進める。
課題b)Pcdh発現と神経結合との相関解析:Pcdhg可視化マウスを用いた組織学的解析を行う。Pcdh発現が高く、発現解析情報が多い、小脳にて解析する。並行繊維―プルキンエ細胞間シナプス、登上繊維―プルキンエ細胞間シナプス、苔状繊維-顆粒細胞間シナプスに着目する。
課題c)Pcdh発現の変動メカニズム解析:2017年度に確立したPcdh-β3発現細胞の単離条件を用いて、Pcdh-β3発現細胞のエピゲノム状態やクロマチン状態の解析を進める。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] エラスムス医療センター/ラドバウド大学(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      エラスムス医療センター/ラドバウド大学
  • [雑誌論文] Targeted expression of step-function opsins in transgenic rats for optogenetic studies2018

    • 著者名/発表者名
      Igarashi Hiroyuki、Ikeda Keiko、Onimaru Hiroshi、Kaneko Ryosuke、Koizumi Kyo、Beppu Kaoru、Nishizawa Kayo、Takahashi Yukari、Kato Fusao、Matsui Ko、Kobayashi Kazuto、Yanagawa Yuchio、Muramatsu Shin-Ichi、Ishizuka Toru、Yawo Hiromu
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: 5435

    • DOI

      10.1038/s41598-018-23810-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Maternal prolactin during late pregnancy is important in generating nurturing behavior in the offspring2017

    • 著者名/発表者名
      Sairenji Taku James、Ikezawa Jun、Kaneko Ryosuke、Masuda Shinnosuke、Uchida Kaoru、Takanashi Yurie、Masuda Hiroko、Sairenji Tomoko、Amano Izuki、Takatsuru Yusuke、Sayama Kazutoshi、Haglund Kaisa、Dikic Ivan、Koibuchi Noriyuki、Shimokawa Noriaki
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 114 ページ: 13042~13047

    • DOI

      10.1073/pnas.1621196114

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Inhibitory neuron-specific Cre-dependent red fluorescent labeling using VGAT BAC-based transgenic mouse lines with identified transgene integration sites2017

    • 著者名/発表者名
      Kaneko Ryosuke、Takatsuru Yusuke、Morita Ayako、Amano Izuki、Haijima Asahi、Imayoshi Itaru、Tamamaki Nobuaki、Koibuchi Noriyuki、Watanabe Masahiko、Yanagawa Yuchio
    • 雑誌名

      Journal of Comparative Neurology

      巻: 526 ページ: 373~396

    • DOI

      10.1002/cne.24343

    • 査読あり
  • [学会発表] ニューロンIDの可視化 ~クラスター型プロトカドヘリンの発現解析~2017

    • 著者名/発表者名
      金子涼輔、阿部 学、高鶴裕介、渡辺雅彦、崎村建司、柳川右千夫、八木 健
    • 学会等名
      分子生物学会Conbio2017
  • [学会発表] ニューロンIDの可視化 ~クラスター型プロトカドヘリンの発現解析~2017

    • 著者名/発表者名
      金子涼輔、阿部 学、高鶴裕介、渡辺雅彦、崎村建司、柳川右千夫、八木 健
    • 学会等名
      第40回日本神経科会大会
  • [備考] 群馬大学大学院医学系研究科附属生物資源センター

    • URL

      http://doujitsu.dept.med.gunma-u.ac.jp/cms/

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公開日: 2018-12-17  

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