哺乳類のおける生後発達期(幼児期―思春期)における親から受ける養育は、子供の「個性」創発に最も大きな影響を与える環境的要因の一つである。本研究では、不適切な養育行動が子供の脳神経回路やその後の「個性」創発に与える影響について明らかにするため、幼児期―思春期において、生きた動物からニューロンの形態や活動を計測するための手法の確立をおこなった。 平成30年度は生後発達期において、より正確な活動計測を実現するため、既存のセンサー(GCaMP6f)よりも高いS/N比を有する高感度・高速カルシウムセンサーを特定の細胞種に発導可能なトランスジェニックマウスの作製、ならびにそれらを用いた2光子励起顕微鏡による生体カルシウムイメージングをおこなった。新規トランスジェニックマウスを用いて大脳皮質2/3層の興奮性ニューロンの活動イメージングをおこなったところ、生後発達期においても感覚刺激(視覚刺激およびヒゲ刺激)に対する神経応答を高S/N比で検出可能であることを確認した。また、抑制性ニューロンの活動イメージングについてもおこなったところ、ソマトスタチン陽性ニューロンは興奮性ニューロンと比較して、活動同期性が有意に高いことも明らかとなった。さらには、これら確立した活動イメージング法を応用して、不適切な養育行動(早期母子分離)が生後発達脳のニューロンの形態や活動に与える影響について、経時的にイメージング可能な実験系の確立に成功した。
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