私たちは個人ごとに独自の方法で世界を認識しているが、いかにしてそのような個人差が創発されるのかはあまり明らかになっていない。そこで本研究では、日常生活の多種多様な情報を含む自然な動画を視聴中の双生児を対象に核磁気共鳴画像法 (fMRI) による脳活動の計測を行うとともに、ゲノム・エピゲノム情報や行動指標、疫学情報を統合することで、自然な視聴覚体験の脳内表現における個人差の遺伝・環境要因を明 らかにすることを目的とした。前年度中に、大阪大学ツインリサーチセンターと共同で双生児被験者のリクルートと卵性診断、臨床データおよびDNA試料の収集を行うとともに、対象となる被験者に対して、CiNetと共同でfMRI計測による自然動画視聴中の脳活動の計測と、アンケートによる性格や認知機能に関する情報の収集を行った。H30年度は、得られた一卵性双生児21組、二卵性双生児18組の脳機能画像の解析を行ったところ、前頭前野や後頭頂皮質が特に遺伝的影響を強く受けている可能性を示唆させる予備的結果を得た。また、一卵性を対象に血液由来DNA試料を用いたアレイチップの解析を行うことで、これまでツインリサーチセンターにて取得されていたものと合わせて、fMRI検査済みの21組42人のメチル化および一塩基多型データの取得が完了した。さらに今年度から研究代表者である豊田はフィンランド双生児コホートを運営しているヘルシンキ大学のJaakko Kaprio教授のグループに留学し、国際的な双生児研究やエピゲノム解析についての共同研究を開始するとともに、デンマーク、ハンガリー、ロンドンの双生児研究グループを訪問し、研究状況についての見学や意見交換を行った。今後は得られた結果を取りまとめ、学会や論文にて発表を行う予定である。
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