研究実績の概要 |
認知症、自閉症などの精神神経疾患、発達障害は、今後ますます顕在化する社会問題である。これらの個性は、標準的な個性と比べて異常もしくは超正常な特性を示すモデルマウスを用いた研究から、その分子基盤が明らかになる可能性がある。 重合性ヌクレオチド結合蛋白質ファミリーSEPT1-14から成るセプチン細胞骨格は細胞分裂蛋白質として発見された分子ではあるが、最終分化した神経系で最も高発現する。セプチンはアルツハイマー病(Kinoshita et al., Am J Pathol 1998)やパーキンソン病(Zhang et al., PNAS 2003)、自閉症(Barr et al., Eur J Neurosci 2004)にも関与することが示唆されており、精神神経疾患に密接に関連する重合性GTP結合蛋白質として認識されている。申請者らはセプチン機能破綻により生じる行動特性を明らかにするため、欠損マウスの系統的行動解析(自発活動量、協調運動、社会的行動、不安様行動、うつ様行動、記憶・学習など18項目)や形態解析を行い、標準的な個性と比べて認知能力、社会性において強い偏差を示すこと、認知能力に関してはスパイン(樹状突起棘)成熟の異常と相関していることを見出している。精神神経疾患においては、脳の発生発達の異常が知られており、興奮性と抑制性ニューロンのバランス異常、ニューロンの形態そのものの異常、情報をやり取りするシナプスの異常の関与が示唆されている。そこで本研究では欠損マウスの行動特性に関与する領域におけるニューロン形態やシナプス異常を精査した。その結果、特定の脳領域に限定して細胞小器官の異常が認められることを見出した。
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