研究領域 | 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
17H05960
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
渡部 文子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (00334277)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 扁桃体 / マウス / 情動 / 味覚 |
研究実績の概要 |
味や香りの好き嫌いは報酬・危険信号として生得的な情動である一方、後天的な修飾も受け、我々の個性を構成する。同様に、積極性も生得的・後天的に制御され、情動と密接に関与する。しかしながら、味覚と積極性を情動価値の個性という共通の視点から捉えた研究は少なく、神経基盤はほとんどわかってない。我々はこれまで、橋の腕傍核から情動を担う扁桃体へ投射する「直接経路」が、負情動をうみだす忌避信号として機能すること、経験依存的な長期増強(LTP)を示すことを見出してきた。また、腕傍核には甘味・苦味や積極性・消極性など、相反する情動を担う細胞群が散在する。そこで、本研究では腕傍核に着目し、情動価値を個別に可視化する。さらに、光電気生理解析の結果にもとづき、個体レベルで人工的可塑性を誘導し、好き嫌いや積極性の逆転・レスキューを誘導することで、人工的な個性の書き換えという視点から、情動回路の本態を明らかにする。 本研究計画としては、腕傍核における甘味・苦味や積極性・消極性という、相反する情動価値を司る神経回路を可視化し、自由行動下で活動を操作する実験系を確立する。さらに光電気生理学的に、相反する情動を担う神経細胞群が形成する相互抑制の神経回路を、シナプス機構まで詳細に解析する。最終段階として、光行動学的に人工的な可塑性を誘導することで、好き嫌いや積極性を書き換える。本年度の研究実績としては、味覚によって活性化される脳領域をFISHによって同定し、さらにその細胞種特異的マーカーの同定を行った。さらに経路特異的な光操作のための行動実験系および電気生理学実験系を立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度より新たに研究室を立ち上げたため、当初の研究進捗はやや遅れていた。しかしながら、その後行動実験システムおよび電気生理実験システム共に順調にセットアップも完了し、さらに国内外の共同研究体制も新たに構築したことで、当初予定していた闘争かすくみか行動回路の操作・介入は概ね順調に進んでいる。また、アクティビティトラップの実験系は未だワークしていないが、一方で味覚情動によって活性化する脳領域と細胞種に関する新たな知見も得られた。以上のことから、研究計画全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、直接経路に光パターン刺激を用いてLTPを誘導し、その後の行動変化を詳細に検討する。さらに、個体レベルで甘味・苦味依存的に神経回路を個別に可視化し、光遺伝学的に操作可能な実験系を確立する。これらのマウスをY字迷路による嗜好性・忌避性学習や疼痛行動、ストレス応答性を中心に詳細に検討する。あわせて、光電気生理学的解析により、シナプス前・後部における分子ネットワークと可塑性制御メカニズムを解明する。以上のアプローチにより、情動的な個性を生み出す脳内機構を可視化し、当該領域の目指す生得的・後天的な個性創発メカニズム解明への糸口とする。
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