研究領域 | 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
17H05963
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
恒岡 洋右 東邦大学, 医学部, 講師 (50549011)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HDAC4 / 個性 / 経験 / 摂食行動 |
研究実績の概要 |
個性は先天的、後天的要因により形成、変容していく。本研究ではその中でも後天的要因による個性の変容に着目した。個性は様々な経験や環境刺激によってエピジェネティックに変容することがこれまでの我々の研究などにより明らかとなっている。特に、高脂肪食の摂取や絶食は神経活動依存的エピジェネティック因子であるHDAC4の発現変動を誘導することが知られている。本研究では後天的要因による個性変容を解明するため2つのアプローチをとっている。 1つ目はHDAC4の遺伝学的な機能調節による個性変容の誘導と、その分子メカニズムの解明である。本年度は、内在性HDAC4に対するドミナントネガティブとして機能する活性部位欠損型のHDAC4を作成し、そのcDNAをアデノ随伴ウイルスベクターを用いて脳内に発現させる系の構築とその表現型解析を行った。その結果、ドミナントネガティブHDAC4の脳領域特異的な発現に成功した。またこのウイルスを脳の特定の領域に注入したところ、摂食量および体重の変動が見られている。 2つ目として、経験による個性変容が確認できている行動実験系において、個性変容がどのような分子メカニズムによって実現されているのかについて検討している。本年度では性経験及び養育経験による個性変容の責任細胞群の探索を行った。現在のところサンプル数が十分ではないものの、2種類の細胞が個性変容の責任細胞群であることが示唆されるデータが得られつつある。そこで、これらの細胞群だけを効率的にピックアップするためのシステムを構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドミナントネガティブ型HDAC4ウイルスの作成に成功し、実験系が順調に動いている。また、個性変容の責任細胞群候補も見出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ドミナントネガティブ型HDAC4による個性変容モデルでどのような変化が脳内に起こっているのかについて複数のアプローチによって検討していく。具体的にはウイルス感染脳での遺伝子発現変化の検討や、ドミナントネガティブ型HDAC4がどのような神経回路に作用しているのか検討するためのCre-loxp系による発現調節などを実験系に組み込んでいく。これらと並行して、前年度に得られた行動変容の責任細胞群についてデータを蓄積し、再現性を取ると共にそれらの細胞における遺伝子発現変化についても検討していく。
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