個性は先天的、後天的要因により形成、変容していく。本研究ではその中でも後天的要因による個性の変容に着目した。個性は様々な経験や環境刺激によってエピジェネティックに変容することがこれまでの我々の研究などにより明らかとなっている。特に、高脂肪食の摂取や絶食は神経活動依存的エピジェネティック因子であるHDAC4の発現変動を誘導することが知られている。本研究では後天的要因による個性変容を解明するため2つのアプローチをとっている。 1つ目はHDAC4の遺伝学的な機能調節による個性変容の誘導と、その分子メカニズムの解明である。内在性HDAC4に対するドミナントネガティブとして機能する活性部位欠損型のHDAC4を作成し、そのcDNAをアデノ随伴ウイルスベクターを用いて脳内に発現させる系の構築とその表現型解析を行った。昨年度、ドミナントネガティブHDAC4の脳領域特異的な発現に成功し、脳の特定の領域に注入したところ、摂食量および体重の変動が見られていた。本年度はさらに、それらの変化の責任脳部位候補となる領域を二領域まで絞り込むことに成功した。 2つ目として、経験による個性変容が確認できている行動実験系において、個性変容がどのような分子メカニズムによって実現されているのかについて検討している。本年度では性経験及び養育経験による個性変容の責任細胞群の探索を行い、2種類の細胞が個性変容の責任細胞群であることが示唆されるデータが得られた。そこで、これらの細胞群だけを効率的にピックアップするためのシステムを構築するとともに、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析により、遺伝子発現解析を行った。
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